著者: 奥田 昭則
タイトル: 母と神童―五嶋節物語
以前、ブログつながりのブレンダ さんの記事で、紹介されていた本。気になっていたので、早速アマゾンで購入して読んだ。

世界的に有名なヴァイオリニスト五嶋みどりの母、「五嶋節」さんの半生を第3者(ライター)の視点でつづらてれている。大阪での少女時代から、幼いみどりさんの才能に掛けた移住先でのNY極貧生活、そして成功にいたるまでの経緯。

なぜ、五嶋みどりの成功ストーリーではなく、「五嶋節」なのか?
あらゆるジャンルにても「天才」といふものは、その才能を見出し育てる人の存在が必須であると、聞くがまさに彼女が定義そのもの。
(と同時に、なんで自分の親はちゃんと育ててくれなかったの?なんてくやしくも思っちゃうのですが)
母親である節さんが、「いかにして五嶋みどり、龍と2人の天才的なバイオリニストに育てたか」ということよりも、彼女自身のヴァイオリンへの「情熱」(音楽を如何に愛しているか、最高の演奏をするにはどうしたらよいのか?という理想論)が伝わってくる。その彼女の生き方の結果として2人の子供が天才(ここでは「神童」という表現になっているが)として生み出されたわけである。

節さん自身が、凡人レベルをすでに逸した「天才」ヴァイオリン奏者であることも、この本で知ったことなのだが、可能であるなら、実際に彼女の演奏を聞いてみたく思った。
(クライスラーを尊敬するアーティストとしてやまないらしいが、彼女はどんな演奏をするのだろうか)

小さいときから、学校というルールが大嫌いであったこと、歌謡曲などのバックミュージシャンをひそかにやってみたりしたこと、「家」同士の古いしきたりも重荷に感じていたこと。。そしてNYに飛び出したこと。2人目の龍くんは、なんと「できちゃった」婚でもあったこと。
すべてを含め当時では破天荒な生き方は、今の女性たちの「先」をいっている。
・・目からウロコというか、そんなドラマティックな生き方を、みどりさんのお母さんがしていたと思うと、なんだか感慨ぶかい。
みどりさんが、とても真面目に見えるがために。

とも角、なぜ一流を目指すには「日本」ではなく「海外」という場所を選んだ選択眼は、正しかったわけである。でもこのやり方は、すべての人間に当てはまるわけではなく、やはり選ばれた「人」のみ実現できること。
凡人な私にはうらやましい話である。

が、節さんの「ジェットコースター」的な生き方は、勇気をもてるし、今の私たちには共感をもてるところが多いのではないだろうか?
音楽好きでなくても、楽しめる一冊として、ご紹介!