著者: 篠田 節子
タイトル: ハルモニア


7、8年くらい前に、堂本光一が主演したドラマの原作本。
当時は、たまたまのタイミングで最終回だけ見ることができたのだが、あまり覚えていなかった。。
知能障害であるヒロイン役は・・・だれだっけ?とドラマ通の友人に聞いたら、「中谷美紀」だと。
ははあ~ん。。なるほど。ドンピシャリの役柄ですな。(私は、菅野美穂かと勝手に勘違いをしていた)
今となっては、ちゃんと見ておけばよかったと思う作品です。
ビデオ、再販されないかな。

ストーリーは、ある音楽教師と手術の失敗により感覚をコントロールすることができない少女が、チェロの演奏を通して自己表現を獲得していく過程の記録である。その少女は、人がうらやむほどの絶対的な「音楽的才能」を教師の指導の下、段々開花させていくのと引き換えに自分自身の身体にダメージを与えていく。。至高の芸術を追い求める人間のエゴイズムと人間の真の幸せとは何かを感じさせてくれる。うーむ。
(あらすじは、amazonのページ をみてください)

現代版「ヘレン・ケラー」と言ってしまうとかなり暴力的な表現だが、実際に「サヴァン症」といって感覚を欠如している人間の場合、その能力を補完する形で聴覚や視覚などある感覚が突出することがあるというのをこの作品のあとがきで初めて知った。
※「ハルモニア」では主人公の少女、ユキが超常現象を引き起こしたり、カリスマ的なチェロプレーヤーの霊が乗り移ったかの状態になったりと、エンタメ・ファンタジー的な要素も強かったが・・
生まれつき「天才」と称されるほどの才能を持ったごく少数の人たちへ賞賛と羨望は、私を含めて、多くの「凡人」にとっては得がたいものだが、時には重荷になり自己破滅に追いやる要素になる。人間として絶対的な力というのものは、無いわけでそれが人間の弱さでもあり、怖さでもあると、読んだ後に実感した。

色々、音楽に関する小説は読んできたが、この作品は作者の篠田さん自身もチェロを弾かれることもあって、曲の解説や表現方法などもかなり説得力がある。実際に、バッハの無伴奏の6番が、取り上げられている節があったが、チェロを弾く子に聞くとなるほど、演奏も難しく曲調などもストーリー内の表現も的確であるようだ。実際に聞くときに、今度は改めて違って聞けそう・・・。


非凡な私には、見えない絶対的な音の世界を「ハルモニア」というようだが、死ぬ前に一回は体験してみたいもんだ。
音楽ファンでなくとも、この作品さっと読めて楽しめますよ。
オススメ!!