映画の楽しみ方は、2種類あると思っている。

ハリウッド映画やアクションものは、映画館の大画面で。
誰にも邪魔されずじっくり世界にはまるのなら、家のビデオかDVDで。

この「グッバイ、レーニン」はまさに後者のタイプ。
ストーリーは、まだ東西に分裂していたころの、東ドイツ。
小さなテレビの修理を職業としていたある若者アレックス。
父親は、恋人と西ドイツに亡命、その反動で熱心な共産党運動に傾倒していた母親はある日、心臓発作を起こして、入院をしてしまう。母親が昏睡状態のなか、反社会主義運動が起こり、とうとうベルリンの壁が崩壊、街にはコカ・コーラの看板や衛星放送のアンテナがあふれ出す。医者から、母親にショックを与えると命取りになるとの忠告を受けたアレックスは、母親のために旧態以前の東ドイツにみせるために、部屋の仕様を昔に戻し、自作のニュースを作ってビデオで流したり、涙ぐましい努力を続ける。。

アレックスが、真剣に昔の滑稽な東ドイツ時代の習慣を取り繕う様が、滑稽で妙に悲しい。ストーリーの中でも、戻した昔のドイツは、実際には存在しない彼自身の「理想郷」のようだと形容されていた。いつの間にか、母親のためと思ってやっていたことは自分のためでもあった。。

最後に、一命をなんとか取りとめた母親が元気になり、家族で昔行った別荘に、ピクニックにいく。東西ドイツ統一という大きな事件があったにもかかわらず、そこは不変の場所だった。思い出が昔のままで残されていたのだ。
映画の冒頭で、主人公たちの子供時代の映像が流れていたのだが、ようやく最後で繋がった。「家族のつながり」は何があっても決して色あせたりはしない、ということであることをこの作品は一番言いたいのかな、と見終わった後感じた。

DVDの特典で、ヤン・ティルセンというこの映画のサントラを作ったアーティストのドキュメンタリーがある。彼の繊細な音楽を作っていく工程と監督との微妙な力関係など、バックグラウンドをわかって再度映像を見るのも、DVDならではの楽しみ方だ。
メジャーではない映画だが、じんわりと心に響く映画で、オススメです。

グッバイレーニン 公式サイト