今日はむかしむかしの話をします。
それは恐ろしくも悲しい「彼」との出会いでした。
「彼」といいましたが、彼が男なのか女なのか、そもそも性別というものがあるのかはわかりません。
苦悩の中にあった学生時代の話です。
明け方までうなされるように悶え、苦しみが限界点を超えたとき、彼は現れました。
彼が現れると、それまでの苦しみは嘘のようにすっきりとし、とても穏やかな気持ちになりました。
一目見てわかりました。
彼はすべての罪を許す存在なのだと。
彼はすべてを許し、受け入れ、そしてすべてを諦めているのです。
心の痛みをなくし、苦しみから解き放つ様はまるで神の子のようですが、私にはわかりました。
彼はいけない存在だと。
近づきすぎてはいけない。
触れてはいけない。
信じてはいけない。
全てを受け入れ、許しているのは、慈悲や慈愛とは全く違う次元の話。
彼は善悪の彼岸にいるのです。
神の子ならば善を勧め、悪を懲らしむ。
しかし、彼は違います。
善も悪もどうでも良いのです。
そんなことを望みもしませんが、人の命を奪ったとしても何も感じない存在。
それが彼。
彼と出会ってから、私は人生の選択を大きく変えることになりました。
それが良かったのか悪かったのかは今でもわかりません。
ひょっとしたら彼は悪魔だったのかもしれません。
はたから見れば、私は転落したのです。
しかし、新しい人生を手に入れることができました。
私は自由になったのです。
素晴らしい出会いもありました。
運命の輪が回り始めるきっかけをくれた、それが彼です。
彼とはそれっきり会っていませんし、会おうとも思いません。
会ってはいけないとすら思います。
しかし、彼は私のすぐそばにいるのでしょう。
彼は神様の下半分なのだと思います。
上半分ならば、私に救いの道の一つも示したでしょう。
そんな彼との一度きりの出会いを、なぜか最近思い出したのです。
誰か他にも、そんな「彼」に出会ったことはありませんか?

