1976年 第21回 『モントリオール・オリンピック大会』
突如、現れた彗星…いいや超新星と呼べる極められた身体能力を駆使し
さわやかな風の様に舞い、どこまでも高く…縦横無尽に跳躍する生命の律動。
ナディア・エレーナ・コマネチ選手が体操界を席巻した瞬間でした。
白い妖精…
平均台で、そして段違い平行棒で魅せられた観衆の衝撃は伝説に…
10点満点で技を決めた14歳の天才少女に息をのむ会場。
感情の昂ぶりすら見せぬ秀でた才能は萌芽し、その細い四肢が描く軌跡は世界を革新へ導いたのです。
五輪体操史上では、初の快挙を成し遂げたルーマニアの白い妖精。
あまりに俊敏な躍動感をミスひとつない精緻な技術で演じる彼女。
魅入られた魂動!
しなやかに鍛えられた鋼のような強さが、この華奢な身体のどこに秘められるのだろうか?。
僅か6歳の頃より受けた英才教育が至上最高の躍動美に昇華したのです。
…身長1メートル53センチ、体重40キログラム
完璧な体操選手の登場に、こぞって世界は称賛と惜しみない評価を与えました。
この大会で手にした3個の金メダルと銅メダルを持ち帰り祖国の英雄となる。
(ルーマニア団体では銀メダル)
以後も次々と世界記録を塗りかえる印象は…穢れなき純白のレオタード姿!。
黒海に面した欧州の共和国ルーマニア国旗が、一躍はためいた時代を忘れません。
あらゆる形容詞は、彼女の存在の前には意味を失う。
当時のオリンピックを運営したIOCや審判団には、実際の体操競技で満点が出るなどとは想定外であり(通常は9,99を上限とした)正しく採点を掲示できませんでした。
史上初の個人総合優勝者は、超人でも妖精でもない…ひとりの少女。
(20世紀… 1961年11月12日生まれ)
可憐な少女が世界を変えた!
鍛えあげられ、繊細にして大胆な演技が完成する!
いつも羨望の的であり続けた彼女は、最も世界中で愛された体操選手ではないでしょうか。
幼いながらも国の代表として毅然としたオーラを放つ、そんな聡明さと覚悟が美しいのでしょう。
いまの我が国で失われつつある心のチカラ…
オリンピック開催地に選ばれて浮かれているだけではいけません。
人間が尊い何か?を成し遂げるには純粋さすら凌駕する真剣な日々の積み重ねが必要です。
Надежда, (ナディアに由来する…ナジェージュダ、ロシア語で『希望』の意。)
コマネチ選手のような脚光を浴びなくとも真摯に生きられる自分でありたい。
五輪に秘められた永遠のテーマを忘れないようにしたいものです。