傾奇者(かぶきもの)



いまでは…知られた言葉でしょうか。


戦国から安土桃山時代を駆け抜けた彼等を震わせた精神と、纏ったマテリアルを紹介します。



三宝荒神形兜』といわれる兜の前立て。



これは上杉謙信公の使用した甲冑の物。



三宝荒神というのは、仏宝・法宝・僧宝という(正面、左右に顔が付いています)三宝を守護している仏神なのです。



凄まじい形相をした前立ては、見る者を完全に威圧して!戦場においては彼のイニシアチブを発現したことでしょう!。



自らを毘沙門天の化身…とした謙信が仏門への帰依する信仰心や気迫を表現した前立てには、鬼気迫るものが漂います。












己の精神性を具現化すべく、洒落ているのか?武将が戦場で自己のアピールに飾られた特異な前立て。



しかし、目立つのは危険でもありますが。

仲間には鼓舞し、強い敵を自らに誘きよせて斬るためのアイテムだったのです!。





それぞれに工夫を凝らした兜のデザイン。


烏帽子、揚羽、百足、栄螺、二葉葵などもあり。優雅さから仏法の意味深いものまで様々な工芸の技が生かされた秀作揃い。


(因みに百足…ムカデとは毘沙門天の使いなのです)







さて、この甲冑は上杉家の家臣だった時代の物で米沢の地に伝えられます。



朱漆塗紫糸素懸威五枚胴具足



当時の『前田慶次郎』所縁の所持品や記録された文献などは…あまり残ってはいないため、豪壮な甲冑などは実物が無いので残念です。












それでも、南蛮兜を被り、朱塗りの甲冑に鱗札の袖などは機能的かつ鮮やか。

(もしもバイク乗りなら、赤い革ツナギとヘルメット)



加賀の前田家中においても、家督の相続問題や周囲の醜い嫉妬など、現代と変わらず些末な人々の顛末に飽々していた前田慶次郎?。


いくさ(戦)に生死を賭けた真実と生きるフィールドを求めたとは…思われがちですが。





武家としての彼の嗜み、優れた教養なりを見ますと、哀しみやクールなニヒリストの面も感じられます。




さぞや…天下など小せぃものだったことでしょう。














慶長の頃(1600年代)南蛮貿易で日本に喫煙の風習が伝えられて以来、人々の間には大流行。


煙草に使う煙管(きせる)は、東アジア独特の喫煙具とも言われ…職人も様々な趣向の煙管を作り、民衆にはアクセサリーでもあった。



煙管は、煙草を詰める火皿(雁首)、その間には羅宇(らう)という管があり、吸い口がある構造です。

(良い子のために、写真は割愛します)





これは慶次郎が愛用したといわれる徳利。



戦雲如墨疾雷雨祝出陣神酒一盃』…利貞の文字と、へのへのもへじ…


まで彫ってあります。











ユーモラスな趣向の瓢箪徳利

(高さは25,3㎝)



森羅万象を愛で~花鳥風月にも心を通わす慶次郎…。



いくさ人…?どころか教養人。

ひとり庵にて、酒を呑む慶次郎がいたかもしれない…。



』であり…『』である前田慶次郎。





当時は酒を携帯することで、負傷時には消毒薬にもなった。

また足下の自然に生える、化膿どめとなる草が…いくらでもあります。



たまには草花に目を向けてみては?
















京都の祇園祭の風景。



大きな母衣を担いだ武者の姿。

祇園祭の山車など、メインストリートを往く行列に混じり闊歩したようです。



ただ…空っぽの御輿を担いで踊らされる中身の無さは、現代の日本人心理も決して変わらない。







当時の風俗画『江戸名所図屏風』右隻六扇

(写真下)

安土桃山から江戸時代の初期に世俗に伝わる『かぶき者』。



流行りの粗暴なる振舞いの若者、派手な衣装や髪形、エキセントリックな破綻者とも呼べる輩を指す。



ところが、前田慶次郎のような人物は、己の置かれた立場から自嘲的に…傾いてると言っていたと思われる(ナイーブですな?)。




街中で身の程も知らぬ軽薄な若者達と違い

、決して望まぬ実戦で幾百~幾千の兵を斬り殺さなければならない血塗られた自分。



他者が僻みや羨望から述べた言葉とは根本的に違うと解釈しています。



いまも巷には情けない暴力や無恥な人間の争いが絶えない。



慶次郎が生きていたら、どんな風に感じることでしょう?。


















荒々しいだけの乱暴狼藉は傾奇者にあらず



果たして…その心はあるのか?。




















さて、真打ち登場か!



直江兼続』の愛をあしらった前立て。



これほど解りやすくシンプルなメッセージ性は他にはない!。



上杉景勝の右腕として武勇と才知を誇った知られざる武将の甲冑。



透かし彫り渡金の『』を鋲留めした?リベット仕上げ。



モチーフは、愛染明王だとか愛宕権現に由来するともいわれますが。




これを被った槍働き!、仏門に帰依し殺戮よりも知略で戦国の世を変えていこうとした漢の気風が集約されています。



上杉謙信の思想とモチベーションの高さは無私の心です。

それは…元祖?正義の戦隊コンセプト!みたいなものかもしれません。



崇高な志しなくしては、無益な略奪と殺戮でしかない戦を…人の心ある絆として捉えたのは偉大なこと。
















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