ドナー(提供者)と、レシピエント(受給者)。
移植医療には、こうした立場となる患者がいます。
もし貴方が心臓弁膜症を患い、日常生活に支障をきたすどころではない状態におかれたら。
心臓の弁膜?は、血液中のカルシウムが弁に沈着していき・・・正常な動きが阻害される病があります。
こうした弁膜の機能異常に対し、元通りの健康な身体に戻りたい。
そうなると・・・人工弁などに置き換える心臓手術もあり。
人工弁には~5種類ほどありまして
①生体弁(ステント付きの)
牛や豚など家畜の生体から作られた弁葉をステント(枠組み)に貼り付けたもの。
カーポンティア、エドワード弁、モザイク弁・・・など。
②機械弁
カーボンなどのマテリアルを基に作られた弁。
SJM弁、ATS弁、カーボンメディックス弁・・・などなど。
③同種弁(ホモグラフト) 通常同種弁
凍結保存同種組織、人間の死体から摘出された→人間の組織(弁)
提供された同種弁、同種血管などを冷凍保存して利用するもの。
(ある意味、一番・・・多いかもいれない?)
④自己肺動脈弁(オートグラフト)
自分自身の肺動脈弁を転用。 拒絶反応の心配がなく安全。
⑤ステントレス生体弁
牛の大動脈弁を~大動脈ごと!摘出して使う。
フリースタイル弁とか、プリマプラス弁。
こうした人工弁は、まさに生体部品。
自己肺動脈弁を用いた大動脈弁の置換術を行う手術をロス手術と呼びます。
テレビなどで聞き覚えがあるかも。
ロンドンの心臓外科医ドナルド・ロスさんが、この術式を人間に応用して治療 したことから彼の名をとってそう呼ばれます。
日本の場合、こうした人工弁は、主にアメリカからの輸入に頼ってます。
エドワードライフサイエンス社製 → 牛の心外弁(CEP弁)
メドロトロニクス社製 → 豚・モザイク弁(Mosaic弁)
ちなみに機械弁は、患者の肉体には異物として最も拒絶されやすいんです。
タクロリムスのような免疫抑制剤が必要となります。
こうしたロス手術に向いているのは、若年者や抗凝固療法がしづらい患者。
余命も20年以上は見込める患者。
それから大動脈狭窄症”や自己免疫疾患”がない患者さんなど。
向かない人は、1歳児以下や70歳を越える高齢の方々。
大動脈弁閉鎖不全症”または自己免疫疾患”がある患者さん。
症状が重い人や弱っている患者さんには・・・お勧めできない。
また・・・犬の話ですみませんが、
1961年 スタンフォード大学の心臓外科医シャムウェイさんが、犬を使った実験で肺動脈弁を大動脈弁の位置へ置換して成功した手術方法を発表。
それから・・・時は流れて1967年に発表された、ドナルド・ロスさんが人間に応用し、成功したのです・・・。
半世紀ほどかけて、当時は14例ほどの症例が紹介されただけのものが、21世紀までに多くの人々の健康と生命を救い続けているのですね。
先天的な二栓弁の小児に、三栓弁に再形成する心臓弁の手術・・・・
果ては有名な心臓肥大症へのバチスタ手術、人工心臓や心臓本体の移植など画期的な治療が生まれています。
しかし・・・その恩恵を受けられる幸運な人は、まだまだ僅かなんです。
こうした分野に貴重な生命を捧げてくれた提供者や動物達がいたことを忘れないようにしたいです。
いまも・・・国道には、大きな野生動物や犬猫の轢殺死体が放置されていることが多いです(せめて脇に寄せてやりましょう)。
ペットに限らず・・・そんな生命をも愛でる気持ちを・・・。
クルマは確かに便利ですが、こうして衣食足りている私たちが・・・見殺しにするほど余裕がないなんて悲しいでしょう。
一患者より