KKR札幌医療センターの敷地内薬局を巡る入札妨害事件は、4月の一審札幌地裁判決で、病院の元事務部長と業者側の元幹部2人に対し執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。

 

 元事務部長の刑は確定し、判決を不服とした業者側元幹部2人は、札幌高裁に控訴し係争中だが、事件的には終結した印象だ。ただ、病院側とアイン薬局の双方は不正入札の結果、長期にわたって大きな利益を得続けるわけだから、これで落ち着いてしまっていいのか、という思いがなくならないでいた。

 

 そうしたら、アインHDのモノ言う株主が、入札妨害事件は「企業統治の問題」として公然と会社側を批判し役員の解任や選任を求め、株主提案への賛同を呼びかけているという報道があった。要するに、会社側に改革を求めているわけだ。

 

 

 なるほど、今どきはこういう圧力がかかる。投資ファンドだから経済的利益の追求が第一ではあるものの、それには企業統治をちゃんとしろよ、ということだから経営陣には牽制になる。入札妨害事件についても、会社が公表した社外調査チームによる報告書の不明点を問う公開質問状を送るなど、ガチで対峙している。アインは気が抜けない。

 

 それに比べて、入札妨害事件のもう一方の当事者組織はどうしたもんだろうか?病院側はホームページで「信用失墜」を謝罪し、「再発防止に努め信頼回復に向け取り組んでまいります」としただけで、具体的にどうするのかは分からない。おまけにKKR(国家公務員共済組合連合会)本部は全く知らん顔で、「契約監視委員会」とやらにも取り上げられた気配はない。

 

 KKRは財務省が所管する法人で、理事や幹部職員のポストはいわゆる官僚の人事異動に大いに利用されている。現在の役員の状況をみると、理事長は事務次官経験者だし、理事8人はいずれも各省庁退任後に就任している。部長級の幹部職員も今月3名が財務省から異動している。

 

 “天下り”が悪いなどとは全く思わない。行った先で優れた知見や豊富な経験が活かされれば、ひいては社会の発展に寄与する。要はちゃんと仕事すればいいだけのことだ。

 

 それが、先般のKKR札幌医療センターの入札妨害事件とその後の対応を見るかぎり、優れた知見も豊富な経験も全く活かされていないわけで、所管する財務省がKKRにモノ言うべき責任を果たしていないようにみえる。

 

 財務省がモノ言わないんだったら、マスコミ、特に地元北海道新聞には、ぜひそういったところを深掘りしてもらいたい。モノ言う株主の記事を読むと、あらためてそんな気分になってくる。