衆院東京15区補欠選挙で、政治団体が他陣営の街頭演説を妨害した疑いで5/13に捜索された。そこで道新は5/16に「有権者の聞く権利守れ」という社説を掲載した。

 

 

 民主主義の重要性、憲法による保障、現行法の枠組みでの対処などなど。ただし、札幌の“ヤジ”排除訴訟は表現の自由として、道新は排除された側を擁護したい。そこで、ヤジとは明らかに違うから今回の妨害行為とは同列に扱うべきではない、と社説の途中に押し込んだ。

 

 さて、どんなものがヤジで、「有権者の政治的な意思表示の一環」なのかねぇ?どこからが、ヤジではない妨害行為なのかねぇ?社説には判例として「聴衆が聞き取ることを不可能または困難にする行為」とあるが、ヤジは有権者の政治的な意思表示の一環だからセーフと判示されたわけじゃないんだろう?

                         

 

 札幌の件で投稿された実際の動画をみると、“妨害行為”なのがよくわかる。東京の例と同列に扱うべきではない、という主張は全く通用しなくなる。

XユーザーのNathan(ねーさん)さん: 「ヤジではなく連呼行為。 この距離でこの音量だと演説に集中できない。 現に周囲の人も彼に注目している。この動画だけでも、安倍議員の演説が一回では聞き取りにくくなっているのが分かる。 https://t.co/by82TmxkeC」 / X

 

「安倍ヤメロ」やじ排除訴訟の判決文と北海道警の主張と表現の自由・選挙の自由 - 事実を整える (jijitsu.net)

 

 5/17NHKのほうには、道新社説が引用した昭和23年の最高裁判所の判例に加えて、昭和29年大阪高等裁判所の裁判例も書いてある。「演説の妨害を認識しながら、聴衆が演説内容を聴き取りがたくなるほど、執ように質問などをして演説を一時、中止させることは妨害にあたる」という内容だ。道新社説がこれに触れなかったのは、所詮札幌のヤジは東京の妨害行為と“同列”だと分かってしまうからだろう。

 

 東京で政治団体幹事長や代表ら3人が逮捕されると、道新は今度は札幌の“ヤジ”排除訴訟の当事者を引っ張り出し、「異なる事案」との見出しをつけた。「表現の自由を守ることとは異なる事案だ」との主張をさせている。

 

 しかし、異なる論拠が示せなかった。肉声のヤジが取り締まられるのはおかしいとか、拡声器を使って他の陣営を邪魔した行為は自分たちとは別の問題、とだけ主張している。だが判例、裁判例では拡声器使用の有無など関係がないだろう。妨害行為だから排除されただけのこと。現行犯逮捕されなくてよかったね、ということだ。

 

 

 こうしてみると、道新社説のタイトル「有権者の聞く権利守れ」はそのとおりだ。そのためには、「選挙の自由妨害」は排除されてしかり。札幌の“妨害行為”が「有権者の政治的な意思表示の一環」というのはムリ筋で、当事者とともに「異なる事案」と主張したのは逆効果だった。‥そういうことだな。