杉田水脈のなでしこリポート(1) | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

理想の上司

3月にニューヨークを訪問し、国連女性の地位向上委員会(CSW)のパラレルイベントに参加してきました。その様子を「まるで学級崩壊のよう」とブログに書いたところ、たくさんの反響をいただきましたので、ここで少し、このパラレルイベントについて説明したいと思います。

 日本向け見解をめぐり物議を醸した国連女子差別撤廃委員会(CEDAW)は特に開催時期が定められているわけではありません。今年2月に対日審査を終え、翌3月に最終見解を出したので、次回の開催は東京五輪後になるのではないかと思われます。

 このように不定期開催の委員会が多い中、女性の地位向上委員会は毎年3月にニューヨークの国連本部で開かれます。この委員会に参加できるのは「協議資格を持つNGO」に限られていますが、協議資格を持つ、持たないにかかわらず、国連周辺の関連施設で「女性の地位」をテーマに講演会やパネルディスカッションなどを開催することができ、2週間の委員会開催期間に合わせて全世界から450もの団体が集まってきます。これを「パラレルイベント」と呼ぶのです。

 さて、「歴史の真実を求める世界連合」(GAHT)の主催で、私たちは3月16日に日本人の保守系団体として初めてパラレルイベントを開くことができました。

 

イベントのタイトルは「Comfort Women Not Sex-Slaves」(慰安婦は性奴隷ではない)。このタイトルで一体どのくらい人が集まるのかしら…。正直言って不安でした。

 会場の建物内では、NGOヒューマンライツ・ナウの事務局長を務める伊藤和子弁護士にばったり出くわしました。国連「児童の人身売買・児童売春・児童ポルノ」に関する特別報告者のマオド・ド・ブーア=ブキッキオ女史が昨年10月の訪日中に根拠もなく「日本人の女子学生の30%が援助交際をしている(後に13%に訂正)」と発言した事件がありましたね。外務省の抗議を受け、ブキッキオ女史は発言を事実上撤回しましたが、伊藤弁護士は彼女に偽りの情報を流したのではないかと疑われた人物です。

 講演会の会場がダブルブッキングになっていて排除されそうになるトラブルもありましたが、何とか開催にこぎつけました。

 定員が50~60人の会場は立ち見が出るほど大盛況となりました。アフリカ系やアジア系の民族衣装をまとった人々も少なくなく国連らしくグローバルな感じです。そして8割が女性でした。

 改めてこの時のビデオを見てみました。元カリフォルニア大学教授の目良浩一氏や日本近現代史研究会の細谷清氏が話している間、ヤジを飛ばす観衆がいました。後ろの方からは「恥を知れ!」という言葉も聞こえました。

 

この「恥を知れ!」という言葉は、アメリカで慰安婦の真実を訴える日本人に対し、度々投げかけられる言葉です。「韓国には実際につらい体験をした元慰安婦のおばあさんが存在しているのに、彼女たちを否定する歴史修正主義者は恥を知れ!」というわけです。慰安婦像建立をめぐるグレンデールやサンフランシスコでの意見公聴会や慰安婦像撤去裁判では、議員や陪審員、時には裁判官からもこの言葉が投げかけられるといいます。

 私は講演会で、慰安婦問題ではなく、ベトナム戦争時の韓国軍の蛮行やライダイハン(韓国軍兵士がベトナム女性に産ませた子供)の問題を指摘しました。昨年10月、ジャーナリストの井上和彦氏らとベトナムを訪ね、調査した時の実際の写真をスクリーンに映し、一つ一つ説明していきました。韓国軍によって惨殺された人たちの慰霊碑、幼いころに被害にあった男性、そして韓国軍が管理運営していた慰安所…。よほど聞きたくなかったのか、何人もの聴衆が退場しました。

 

我々3人の話が終了し、質疑応答の時間になるとものすごい状態になりました。日本でも質疑応答なのに質問をせず延々と持論を展開する人がいますが、国連でも全く同じです。しかも、司会者(チェアマン)に指名されてもいないのに勝手に立ち上がって話し始めるなど、ルールも時間も守る気配はないのです。

 「私は、釜山にある慰安婦記念館に行ってきた。あなたたちはそこに行ったことがあるのか?」

 「慰安婦記念館に展示されていた証拠が、慰安婦のおばあさんたちの証言が嘘だというのか?」

 アフリカ系と思われる女性が必死に叫びます。我々がそれに答えて「慰安婦の証言はころころ変わる。まったく信ぴょう性がない」と答えると会場は大ブーイング。「70歳や80歳のおばあさんの言うことがその都度変わるのは当たり前じゃないか」と言い出す始末でまったく話になりません。(そもそも70歳80歳って戦時中は何歳ですか?)

 会議終了後、突然泣きじゃくる韓国人女性もいました。これがうわさに聞く「韓国の泣き女」なのか…。周りに集まって彼女を慰める女性たちもいました。

ニューヨークでは、3月16日の他に3月24日にも同じくGAHT主催でパラレルイベントを行いました。聴衆の数は50~60人程度であまり変わりません。

 私は残念ながら24日の会合には参加できなかったので、ビデオを見せていただきました。16日の会合には、国連関係の人や韓国系の人がかなりいましたが、24日の会合には、あまりいませんでした。プレゼンテーションも静かに聞く人ばかりで質疑応答の時間もあまり反応がありませんでした。

 この差をどうとらえたらよいのでしょうか?

 16日の会合は聴衆にかなりのインパクトを与えたのではないかと考えられます。「予期しないことを堂々と述べている!」といった反応かもしれません。ですから彼女たちも必死で言い返したのです。質疑時間における興奮はインパクトの大きさを示すものと考えてよいと思います。

 一方、24日の会合は、海外在住の日本人女性が主な発言者でした。彼女たちは、それぞれが住む環境における「日本」について、語りました。16日に続く2回目の会合だったこともあり、「君たちの慰安婦についての理解は間違っている、それを糺せ」という強いメッセージとして伝わらなかったのかもしれません。

 私が参加した16日の会合は、大きなファーストインパクト=明確なメッセージがあったので、相手の方も反論する必要性を強く感じたと思われます。

 

ジュネーブの国連委員会で発言した時とはまた違う意味で驚きでした。中国や韓国の主張はかなり浸透し、アメリカ人を始め、多くの人々が信じ込んでいます。左派勢力の長年にわたる国際発信が功を奏したのでしょう。それを放置してきた政府や外務省の責任は大きいといえます。まだまだ長い道のりだと改めて感じました。

 大きな問題は、国連の委員会で決まります。したがって、それに影響を与える方法を採る必要があります。パラレルイベントで意見を述べる。これはまだやっと扉を開けたにすぎません。より直接的な方法を考えていく必要があります。今後はその方法についても書いていきたいと思います。

http://www.sankei.com/premium/news/160406/prm1604060006-n1.html

 

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■杉田水脈(すぎた・みお)昭和42年4月生まれ。鳥取大農学部林学科卒。西宮市職員などを経て、平成24年に日本維新の会公認で衆院選に出馬し、初当選。平成26年に落選後は、民間国際NGOの一員として国際社会での日本の汚名を晴らすため活動を続けている。好きな言葉は「過去と人は変えられない。自分と未来は変えられる」。