増税デフレの愚を繰り返すな! | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 
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【日曜経済講座】

軽減税率論議の落とし穴 増税デフレの愚を繰り返すな
編集委員・田村秀男



 与党内では、平成29年4月の消費税率10%引き上げに向けて、軽減税率導入論議がたけなわだが、肝心な点を忘れていないか。生活必需品の一部税率を据え置こうと、増税が引き起こす国民経済への災厄は甚大なことだ。

 
 9年度の消費税増税は慢性デフレを引き起こし、26年度増税はアベノミクス効果を台無しにした。消費税率再引き上げという矢は安倍晋三首相が掲げる国内総生産(GDP)600兆円の的をぶち壊しかねない。

 
 国内では財務省主導で緊縮財政路線がまかり通る。疑義をはさんだのは、米国の財務省である。先月発表の外国為替に関する議会報告書で、消費税増税による日本の景気減速を取り上げ、財政緊縮にこだわるとデフレに舞い戻るのではないかと警告した。米国の国益思考の表れだろうが、日本の指導層はデフレと緊縮財政をグローバル経済の中での日本の国益と重ね合わせてみればよい。

 
 国際通貨基金(IMF)理事会は11月下旬、人民元の国際準備通貨単位である特別引き出し権(SDR)構成通貨認定について、投票権シェア70%以上の多数で承認する情勢のようだ。上海株式市場など金融市場の統制など、元はどうみてもSDRの条件である「自由利用可能通貨」を満たさない。ところが、英独仏など欧州は早々と支持表明した。金融界や産業界が元関連金融で得られる利益を重視したからで、その点では米国も同じで支持に回りかねない。

 
 このまま元が国際通貨に仲間入りすれば、アジアでは元が貿易や投融資でドルと並ぶ標準的な決済通貨になり、円は排除されよう。元欲しさに、日本の産業界や金融界は北京詣でに腐心せざるをえなくなり、対中外交の手足を縛るようになるだろう。北京は、「SDR通貨」元を発行すれば、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)はドルに頼らなくても元建てで融資できるようになる。

 
 中国の軍事部門は外貨準備を取り崩さなくても「国際通貨元」によって戦略物資や先端技術の調達が可能になる。米海軍がしばらくの間、南シナ海を遊弋(ゆうよく)しようとも、中国はSDR通貨元という軍資金を永続的に活用できるのである。日本がデフレを先延ばしするゆとりはない。

 
日本の対米協調路線はデフレを容認する財政・金融政策で支えられてきた。

 
 9年度消費税増税が引き起こした内需減退で貯蓄は国内で投資されず、米国を中心とするグローバル金融市場に向かう。国内経済は慢性デフレとなり、余剰資金はますます海外に出る。世界最大の債権国日本と世界最大の債務国米国という組み合わせは同盟関係にふさわしいように見えるが、実は資産国が貧しくなり、債務国が豊かになるという、倒錯コンビだ。

 
 24年末に発足した第2次安倍政権は金融の異次元緩和を柱とするアベノミクスを打ち出し、脱デフレを目指してきた。その「成果」を端的に示すのがグラフである。

 

 


 24年末と27年6月末を比較すると、日銀は円資金発行量を181兆円増やし、円安・株高を演出した。企業と金融機関は収益を順調に拡大したが、内部留保となる利益剰余金は80兆円増えた。

 
 さらに目覚ましいのは対外資産の増加250兆円である。利益剰余金と対外資産は24年末までの3年間でそれぞれ14兆円、90兆円増加したのだが、アベノミクスによってその増勢が加速したわけで、余剰資金を米国など海外に回すという従来モデルが一層強化されている。消費税増税の衝撃で経済成長率がマイナスに落ち込んだ26年度、さらにことし前半とデフレ圧力の再燃は、民間資金の対外流出を促進する要因だろう。

 
 翻って、安倍首相が掲げた名目GDP600兆円の達成は、カネの流れさえ変えれば数年のうちにでも可能とも読み取れる。アベノミクスは資金面で十分すぎるほどの余剰を生んだ。しかし、増税と緊縮財政という最悪の政策をとったために、成果を押しつぶしてしまった。

 
 対外投資増加分のうち100兆円が国内投資に回れば、投資額をはるかに上回るGDPの拡大が見込まれる。あるいは、内部留保の増加分がまるまる国内の賃上げや設備投資に回れば同様だ。

 
 民間は内需が冷えると見込む限り、国内雇用や投資には踏み込まない。予定通りの消費税率引き上げに踏み切るなら、全品目を軽減税率とし、GDP600兆円を達成してから軽減対象品目を見直せばよい。内部留保に課税して、勤労者世代に回せばよい。要は実行プログラムだ。

産経ニュース



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