最優先すべき「国家の意思」 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

【国防女子の構え】拉致被害者の救出こそが最優先すべき「国家の意思」 

ZAKZAK 夕刊フジ


わずか13歳で北朝鮮に拉致された横田めぐみさん


「イスラム国」による日本人殺害事件を受けて、自衛隊による邦人救出に向けた法整備に熱い視線が集まっている。

 犠牲となられたお二人には、心からご冥福をお祈りしたい。ただ、ともに危険を承知して、自らの意思、つまり「覚悟」を持って紛争地帯に乗り込んだのだと思う。イスラム国支配地域など、覚悟なくしていく場所ではない。残念な結末ではあったが、日本人を平和ボケから一定程度覚醒させたことは事実であろう。

 それにしても、この事件に対する政府やメディアの狂奔と言ってもいいような熱の入れようを見ていたら、日本にいながらにして本人の意思に反し連れ去られた無辜(=罪のない)の民、つまり北朝鮮による拉致被害者の救出はどうなったのだと、皮肉の1つも言いたくなった。国家が「国家の責任」として心血を注ぐべきは、むしろ後者ではないのか。

 筆者は、元自衛官や公募の予備自衛官らからなる「予備役ブルーリボンの会」(代表・荒木和博)の一員である。自衛隊関係者ならではの知見と技術を生かして、拉致問題解決のために活動している。その一環として行った「北朝鮮工作員侵入・拉致シミュレーション」では、陸海の特殊部隊出身者が中心となって工作員役を、私は被害者役を務めた。

 海辺を歩いていた被害者役に、工作員役が「写真を撮ってください」などと声をかけ、注意をそらしたスキに背後から2人組が襲いかかる-という想定だ(当会HPを参照)。首を絞められ引き倒された筆者は、手足を縛られ、髪をつかまれ、さるぐつわをはめられたうえ、麻袋に詰められた。全身砂まみれ、口の中には血の味がした。

ある日突然、自分が、自分の大事な人がこのような目に遭わされたら、どうであろうか。しかも、拉致被害者にとってそれは、そこから始まる悪夢のほんの序章でしかないのだ。

 他国でテロリストに拘束された日本人を救出することも重要だが、国が安全を守れなかったことによって他国に連れ去られた邦人の救出にこそ、「国家の意思」として最優先で取り組むべきではないのか。

 「現行法の下で、それは困難だ」というなら、法を改めていくのが政治に携わる者の責務であろう。いつまでも、「いざとなったら米国に頼むしかない」などと、首相が言わざるを得ないような国家はぶざまだ。国民自身がもっと、このことを「自らの恥」として心に刻みつけ、そこから脱却することに本腰を入れるべきだと、強く思う。

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 予備役ブルーリボンの会では26日午後2時から、東京・永田町の衆院第1議員会館で「拉致被害者救出と自衛隊」というシンポジウムを開催します。自衛隊による邦人救出の具体的なシナリオを発表し、議論を深める予定です。申し込みはinfo@yobieki-br.jpまで。

 

■葛城奈海(かつらぎ・なみ) キャスター・女優。1970年、東京都生まれ。東京大学農学部卒業後、女優としてテレビドラマやラジオ、CMなどで活躍。ライフワークとして自然環境問題に取り組む。武道と農業を通じて国の守りに目覚め、予備自衛官となる。日本文化チャンネル桜『防人の道』レギュラー出演。共著に『国防女子が行く』(ビジネス社)など。