【大阪から世界を読む】
オランダで「売春博物館」が設立された“理由”
売春合法化の国、「売春婦も働く女性の1人」
産経ニュースオランダの首都アムステルダムの売春街「飾り窓地区」にオープンした売春博物館。入り口奧に下着姿の女性のホログラムがみえる(AP)
オランダの首都アムステルダムで2月6日、有名な売春街「飾り窓地区」に売春博物館がオープンした。驚くような名称だが、オランダでは2000年に売春が合法化。飾り窓地区では、下着姿の女性たちが建物の赤い窓枠から体を見せ、客を誘う。博物館は観光客向けだ。売春宿を再現した部屋や、コンドームなどの仕事道具の展示などがある。世界最古の職業とされる売春婦がどのように働くのかなどの“実生活”を見てもらい、売春婦への敬意を持ってもらうのが狙いだという。
売春婦たちの「世界」を垣間見る
AP通信やフランス通信(AFP)によると、博物館は運河を望む売春宿にはさまれた場所にオープンした。飾り窓地区はいわゆる赤線地区で、近くには、性や性行為に焦点を当てた「セックス博物館」や「エロス博物館」もある。
博物館は、売春婦たちがどんな生活をし、どうやって働くかを学んでもらうのが狙いだ。
中に入ると、下着姿の売春婦の3次元映像が出迎える。また、売春婦たちが家族と過ごす日常生活の様子などの映像が見られるほか、ファッションや仕事に対する姿勢などの歴史を学べる展示もある。
APは具体的な“働き方”も報じている。例えば、「飾り窓」を半日150ユーロ(約2万700円)で借りる。11時間交代制。再現された部屋(長さ2・7メートル、幅1・8メートル)には、1970年代から使われているブラックライトが灯され、コンドームや潤滑ローションなどの仕事道具が置かれている。ベッドは低く強い構造だ。
アムステルダムの売春ビジネスに関わる関係者はフランス通信(AFP)に対し、こう述べている。
「新たにオープンした売春博物館は売春婦たちの世界を垣間見ることができる内容。例えば飾り窓に腰掛けたときの気持ちとか、飾り窓側から見た景色とかです」
「最初は本当に辛かった」
アムステルダムで現在、性産業に従事しているのは約7千人。ルーマニアやブルガリア出身で、経済的に苦しい女性が75%を占めている。また、飾り窓地区には300以上の「窓」があるが、そこで働いている女性は多くないとされる。
AFPは2012年12月に、アムステルダムの同地区で働く2人のおばあちゃん姉妹を取り上げている。当時70歳だった双子のルイーズさんとマルティネさんのフォケンズ姉妹だ。
2人は1960年代から半世紀にもわたって売春婦として働いてきた。2人の映画がアムステルダムの国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたこともあるほか、2冊の本を出版。また、売春宿を自ら経営し、売春が合法化される前から性産業従事者のための労働組合を立ち上げ、暴力、搾取と闘ってきたという。
ルイーズさんはAFPに対し、約50年に及ぶ売春婦生活について「最初は本当に辛かった。思考を止めるしかなかった。年をとってからよ。ましになったのは」と語っている。
売春婦も働く女性の一人
オランダのように欧州では売春が合法化されている国は少なくない。
支援団体などが強調するように、「売春婦も働く女性の一人」という考え方の広がりとともに、合法化することによって、組織による搾取や暴力から保護しようとする狙いある。オランダやドイツ、ハンガリーは売春婦が職業として認められており、失業手当も支給されるという。
AFPによると、約40万人の売春婦が働き、一日の総売上が6800万ドル(約68億円)になるスペインの東部イビサ島では、売春婦11人が組合を通じて税金を納め、公的医療制度のサービスや年金などを受けるため協同組合を設立した。
また、スイス・チューリッヒには2013年8月、売春線用のドライブイン「セックスボックス」が誕生したが、これも日中から半裸の女性が付近の街角に立つ売春宿を市中心部から郊外に移し、当局が管理するのが目的だとされる。
大阪には、かつての遊郭の名残をとどめる飛田新地(大阪市西成区)がある。戦後も赤線地区として生き延びたが、昭和33(1958)年の売春防止法施行で廃止。いまは「料亭」と名を変え、昔ながらのスタイルで“静かに目立たず”営業を続けている。
オランダの首都アムステルダムの売春街「飾り窓地区」にオープンした売春博物館。売春婦たちの部屋も再現されている(AP)
オランダの首都アムステルダムの売春街「飾り窓地区」にオープンした売春博物館(AP)