春浅く桜の下の花まつり。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【湘南の風 古都の波】





■シーン1

 鎌倉の中心軸である若宮大路では毎年4月の第2日曜日に鎌倉まつりのパレードが華々しく行われる。今年はその第2日曜が8日だったので、お釈迦様の誕生日を祝う各寺院の花まつり(灌仏会(かんぶつえ))とも重なり、ひときわたくさんの人が鎌倉を訪れたようだ。

 東日本大震災の影響で昨年は各種の行事が中止になった。鎌倉まつりもそのひとつ。今年は2年ぶりのパレードなので、例年以上に地元の人たちの力が入ったのも当然だろう。

 おまけに1月には日本政府が『武家の古都・鎌倉』を世界文化遺産登録の候補として、『富士山』とともにユネスコに正式推薦している。

 首尾よく世界遺産登録を果たせるのかどうか。結果は来年夏に開かれる世界遺産委員会の判断を待たなければならない。これからが正念場の1年とあって、今年は鎌倉まつりのテーマも「鎌倉の世界遺産登録をめざして」となった。

 おお、鎌倉の4月は熱いぞ!といいたいところではあるが、お天気の方は例年になく冷たい春。3月に入っても真冬のように寒い日が続いたせいか、梅も桜も開花が遅れた。
もっとも、そのおかげで4月8日には、各寺院の花まつりも、若宮大路のパレードも、桜の花のもとで行われた。まさしく、禍福はあざなえる縄のごとしである。世の中、悪いことばかりではないさ。そんなメッセージを伝えるかのように花びらが風に舞う。

 冷たい春はまた、希望の春でもある。

 ■シーン2 甘茶一杯、鎌倉の春

 木々の若葉が目にしみるような境内の入り口に縁台が出され、お茶のポットと小さな湯飲みが用意されていた。

 「開始までまだ少し時間があります。甘茶を用意しましたので、どうぞ」

 お言葉に甘えて一杯いただく。おっ、甘茶というだけあって、このほうじ茶、甘いね。砂糖が入っているのかな。

 不覚にも無知をさらけ出してしまった。

 アマチャはユキノシタ科の植物であり、その葉を蒸してもみ、乾燥させたものが甘茶だという。もともとほのかな甘みがあるお茶なのだ。砂糖だなんて…。

 鎌倉旧市街の北東。新緑の谷戸(やと)の奥にたたずむ覚園寺(かくおんじ)では4月8日午後、鎌倉市仏教会による花まつりの法要が行われた。

市街地を少し離れているからなのだろうか、たくさんの観光客でにぎわう春の鎌倉も、さすがにここまでくると、訪れる人が少なくなる。

 それでも、茅葺きの薬師堂で行われた花まつりの法要には、100人近い参列者が集まった。本尊の薬師如来の前に据えられた花御堂(はなみどう)には小さな誕生仏が安置されている。

 真言宗の覚園寺だけでなく、臨済宗や天台宗、浄土宗、日蓮宗など宗派を超えて鎌倉市内の9つのお寺のお坊さんがお経をあげ、誕生仏に甘茶をかける。

 薬師堂は正面にご本尊の薬師如来と日光菩薩、月光菩薩。そして、左右には壁に沿って十二神将像が立ち並び、堂内を見下ろす。その荘厳な雰囲気と色鮮やかな花御堂のコントラストがひときわ春を感じさせるかのようだ。

 花まつりにつきものの甘茶は、お釈迦様が生まれたときに甘露の雨が降り、産湯に使われたという伝説にもとづいているという。

 誕生の直後に7歩あるいて右手を天に指し、左手を大地に向けて「天上天下唯我独尊」と言うと、甘露の雨が降り注いだ…。誕生仏が右手を高々と上げているのもそのためだ。
お坊さんたちに続いて、参列した人たちも、花御堂の下の小さな誕生仏にひしゃくで甘茶をかけ、お釈迦様の誕生を祝う。鎌倉市仏教会はこの日、甘茶のティーバッグを用意して「お留守番の方のおみやげに」と花まつりに参列した人たちに配った。

 家に帰り、小さなお茶の袋にお湯を注げば、いつまでも寒い春の夜も、甘い香りとともに、どこか暖かく感じられてくるだろう。

 その心づくしもまた、うれしい。


(文:編集委員 宮田一雄/撮影:渡辺照明/SANKEI EXPRESS)



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                    やっと咲き始めた桜のもとで、誕生仏に甘茶をかける

                    =4月8日、神奈川県鎌倉市長谷の長谷寺境内(渡辺照明撮影)




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