【主張】東アジアサミット
バリ島で開かれた東アジアサミットは、日米などの主導で中国の強引な海洋権益拡大を牽制(けんせい)し、南シナ海の海洋安全保障に重点を置いた原則宣言を採択して閉幕した。
オバマ米政権の太平洋重視外交が本格化し、中国の行動を硬軟両面で包囲する態勢が進みつつあることを一連の会議の成果として歓迎したい。ただ、原則宣言には日米が重視する「航行の自由」が含まれず、野田佳彦首相が掲げた海洋安保協議機関創設も実現しなかったのは残念だ。
特に東シナ海は日本の安全により直結し、朝鮮半島問題もある。首相は米韓豪などと連携を強化し、東シナ海を含むアジア全体の包囲網の構築を急ぐべきだ。
サミット初参加の米国は、事前に米豪海兵隊常駐協定、インドネシアへの最新型F16戦闘機供与合意、クリントン国務長官のミャンマー訪問(12月)などハードとソフトを織り交ぜた先手を打ち、中国を守勢に回らせたといえる。
海洋安保問題では、参加18首脳のうち16人が発言したことが象徴的だ。オバマ氏は「武力行使や脅迫は容認できず、多国間協議で解決すべきだ」と求めた。中国の温家宝首相は「議論する適切な場ではない」と部外者の介入を拒んだが、東南アジア諸国の大半は米国に同調したという。
最大の問題は、中国が領有権紛争の2国間解決にこだわり、東南アジア諸国連合(ASEAN)との行動規範策定にも依然積極的でないことだ。日米が重視する航行の自由、通商の自由、紛争の平和解決などの価値や原則についても基本的姿勢を改める兆しはみられず、放置できない現状だ。
責任ある行動へ向けて中国に協力を求める一方で、不当な行動を封じるための抑止態勢の構築が必要となるのはそのためだ。
とりわけ東シナ海には尖閣諸島や日中ガス田に加えて、北朝鮮問題も絡んでいる。シーレーンの安全確保も欠かせない。海洋のルール作りなどを協議する日本の「東アジア海洋フォーラム」創設構想は中国の反対などで実現しなかったが、あきらめてはなるまい。
日本政府には東南アジアで進む対中抑止を東シナ海につなげていく主体的な戦略が求められる。
その第一歩は米軍普天間飛行場移設問題の解決であり、日米同盟の強化である。そのことを首相は改めてかみしめてもらいたい。