さぶ (新潮文庫) 山本 周五郎 (文庫 - 1965/12)
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【あらすじ】

ぐずでお人好しのさぶ、生一本な性格ゆえに不幸な境遇に落ちた栄二。二人の心温まる友情を描いて“人間の真実とは何か”を探る。

「おれの気持ちが変わりだしたという確かな証拠の一つはこれだ」彼は眼をつむり、一語々々をなにかへ彫りつけでもするように、ゆっくりと呟いた、「---人間の一生は、一枚の金襴なの切などでめちゃめちゃにされてはならない、これが第一だ」


【抜粋メモ】
彼は心の中で、その言葉を繰り返し呟いた。栄二はいま、自分のこしかたを二つに分けて考えることができる。一つは去年の十一月までの、平穏でも恵まれていた自分。他の一つは綿文の出来事からのちの、体も心も傷だらけになった自分。他の一つは綿分の出来事からのちの、体も心も傷だらけになった自分。この二つの自分はまったく違うし、ことに寄場人足になってから今日までの経験をとおして振り返ると、平穏で恵まれた生活の中の自分は、いかにも小さく、薄っぺらで、いい気な人間のように思えるのであった。 [P.268]