米グーグル:モトローラ携帯買収へ 端末製造参入、9600億円
【ワシントン斉藤信宏】米インターネット検索最大手のグーグルは15日、米携帯端末大手モトローラ・モビリティを総額125億ドル(約9600億円)で買収すると発表した。グーグルにとっては過去最大規模の買収。グーグルはスマートフォン(多機能携帯電話)に搭載する基本ソフト(OS)「アンドロイド」を提供しているが、買収で携帯端末ハード事業に本格参入する。独禁当局の承認を経て12年初頭までに買収を完了させる。
グーグルは主力のインターネットビジネスを超えた新たな成長戦略に踏み出し、最大のライバルで、「iPhone(アイフォーン)」を展開する米電子機器大手の米アップル社にハード、ソフト両面で対抗する構えだ。
モトローラ・モビリティは今年1月、モトローラから分社して発足し、アンドロイドを搭載したスマートフォンなどを手がけている。すでに両社の取締役会はグーグルによる買収を了承しており、グーグルは、モトローラ・モビリティの株主から前週末終値より63%高い1株当たり40ドルで株式を現金で買い取ることで合意した。
グーグルのペイジ最高経営責任者(CEO)は「両社が一つになることで顧客に今まで以上にすばらしいサービスを提供できるだろう」とコメントした。グーグルは買収によりモトローラ・モビリティの持つ特許を手中に収める。IT(情報技術)業界では技術開発競争が激化し、特許権の囲い込みに各社がしのぎを削っている。
◇アップルに対抗
【ワシントン斉藤信宏】グーグルが、モトローラ・モビリティを巨額買収することを決めた背景には、スマートフォンやタブレット型携帯端末で快走を続ける米アップル社に対抗するための企業戦略があり、「グーグル対アップル」の全面対決の様相となる。
グーグルはインターネット検索などソフト事業を主力に据え、スマートフォンなどをめぐる販売競争でも「アンドロイド」を他社の開発したスマートフォンに搭載することでシェア拡大を図ってきた。
これに対し、アップル社は自社製品の「iPhone」や「iPad(アイパッド)」で攻勢をかけ、11年4~6月期にはスマートフォンの世界シェアでフィンランド・ノキアを抜いて初のトップとなり、株式時価総額でも世界一になるなど存在感を誇示している。
アップルが4~6月期に2030万台を販売した一方、「アンドロイド」を搭載した「ギャラクシー」シリーズが好調の韓国サムスン電子も販売台数を前年同期比4・8倍に増やし1730万台で2位につけ、急成長するスマートフォン業界の競争は激化している。
グーグル社内には自社製品の携帯端末で競争力をつけられない現状への危機感があり、今回の買収で携帯電話端末の製造に踏み出すことにした。また、グーグルやアンドロイド搭載製品を販売するメーカーに対する特許権侵害訴訟が急増。モトローラの保有する特許を取得し、訴訟の動きを封じ込めたい狙いもある。