精霊の守り人 第十二話『夏至祭』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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「チャグム、何で水車が回るのか判るかい? 水はチョロチョロと少ししか流れていないだろう? 水車はとても重いのに、何故、これだけの水で勢いよく回すことができると思う? 重たいものでも、一度弾みさえつければ、あとは小さな力で動かすことができるんだ」(バルサ)


『なぜなにバルサ』(古っ)のお時間……かと思いきや、主題はさにあらず。今まで、何処となく他人行儀だったバルサとチャグムの疑似母子関係を深めるための回でした。


夏至祭を明日に控えて、祭の大松明をつくるために薪割りにトライするチャグム。この大松明もラストバトルへの布石の一つなのですが、今回はスルーしておきます。宮での夏至祭の風景を懐かしむチャグムに『あの頃に戻りたいかい?』と尋ねるバルサ。『そんなことはない』と強がるチャグム。何だかんだで、家が恋しいようです。親身に世話をしてきたバルサにとっては、複雑な心境でしょう。

チャグムはガキ大将から祭で開催される格闘技の『ルチャ』の練習に誘われます。プヲタの私はルチャ=プロレス! とメチャメチャ期待していたのですが、会場に設営されていたのは、



土俵。



どうみても相撲です。本当にありがとうございました。


そこで、ロタ人のヤーサムという少年が、ガキ大将をポラックなる格闘技でボコった挙句、ヨゴの帝までも腰抜け呼ばわりする暴挙にでます。商人の子供がこんなに礼儀知らずでいいのか。自分の先祖を馬鹿にされたチャグムは夏至祭のルチャ大会でヤーサムに勝負を挑むことに。しかし、バルサは『祭に来るのはカタギの人間ばかりじゃない。裏の世界には私の顔を覚えている奴もいる。だから、祭にはいくな』と至極真っ当な理由から外出禁止を命令します。ですが、この辺のバルサの言動には奇妙な齟齬が見られます。『祭にいかないと約束するなら、ヤーサムと戦って勝つ方法を教えてもいい』だの『薪が足らないから割ってくれ』といって、チャグムを一人にするなど、腹の底ではチャグムがバルサのいいつけに背いて、祭に行くように仕向けているフシがある。そして、予想(或いは期待)通りにチャグムが勝負に向かうと『やっぱり、出かけやがった』と苦笑します。何というか、バルサの『絶対に祭にいくな』という言葉は、上島竜兵の『押すなよ! 絶対に押すなよ!』と同じ『フリ』にしか聞こえません。

本当の親子関係では、子は親のいうことを素直に聞き続けるわけではありません。時に反抗し、お互いの考えと感情をぶつけあい、それによって、親子の紐帯が強まるのです。生物的には兎も角、社会的には子供の反抗という通過儀礼を経て、初めて、親子は親子たり得る。しかも、チャグムが勝負に拘った理由は父帝の名誉を守るためでした。バルサの中に本当の親子関係に対する妬心が完全になかったとは言い切れないと思います。それゆえ、バルサはチャグムに反抗を促すことで、本物の親子に近づきたいと無意識に考えていたのではないでしょうか。


まぁ、固い話はこの辺にしておいて、気になったところを幾つか。ヤーサム、頭悪過ぎ。あの程度の挑発に乗るなよ。チャグムが土俵際にたっているんだから、その企図はミエミエだろう。しかも、負けたらナメクジ喰えとか。コイツは技術はあっても、いいセコンドがいないと大成しないタイプだな。次にヤーサムパパとバルサの決闘。


「うちは父ちゃんがいないからね。私が相手になるよ」(バルサ)


いえいえ、どうみてもバルサが父親です。本当にありg(ry


そして、ヤーサムパパがバルサの袖を掴んだ途端、


「あ、ありのまま、今、起こったことを話すぜ! 『おれは奴の袖を掴んだかと思ったら、いつの間にか投げられていた』。な、何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった……。頭がどうにかなりそうだった。ルチャだとかポラックだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」(AA略


バルサの一本勝ち。水車の理論をチャグムが実践したものより、さらに洗練・研鑽された形で証明してみせました。この時、群衆の中で一際派手なリアクションで飛び起きたのがカルボ。第六話の山狩り部隊にも参加していたあの男です。このカルボとバルサの因縁バトルが次回の『人でなく、虎でなく』に繋がりますが、フツー、気づかねーよ、こんな細かいところ! 物語の最後は道端の蛙に鎌首を擡げる蛇という不吉な場面で〆ですが、これは次回へのヒキであると共に、ヘビ→カエル→ナメクジ→ヘビ……という、日本伝統の三すくみを現しています。あぁ、そのためのナメクジだったのか……て、これも、フツー、気づかねーよ!