クマソ変異紹介Part1
〜翅裏変異について〜
クロマダラソテツシジミ変異紹介、最初は翅裏の変異について!
クマソの翅裏は変異が多く、色彩・斑紋・季節変異などがいくつもあります。
ここではこれまでに僕が採集してきたものを、斑紋列の観点などから考察してまとめました。
※変異の考察についてはあくまで個人の見解です
目次.
- 斑紋列、部屋名称について
- 1.肛角部紋色彩
- 2.肛角部紋衰退
- 3.地色
- 4.l列紋白帯
- 5.5d列第7室紋の大きさ
- 6.5d列第7室紋色抜け・紋流れ
- 7.5d列第4,5室紋流れ
- 8.並べてみた
斑紋列、部屋名称について
まず、クマソ翅裏の変異を紹介していくにあたって、各斑紋列を示した模式図を提示しておきます。
(斑紋列の判別は藤岡知夫先生の名著、"蝶の紋"をもとにしました)

左面が明色紋のl列、右面が暗色紋のd列を示しており、高温期型の個体を標準として作成しました。
5d列に関しては、第7室の黒塗り部分以外発現していると言っていいのか怪しいですが、地色よりも暗色になっているので発現してる判断にしました(ここは人によって見解が分かれそう…)。
また、翅脈ごとで区切られた各部屋の模式図も作成しましたので、そちらも提示しておきます。
(これは部屋という表現であってるのか?)

数字は部屋番号、第〇室を示しています。
例) 1aなら第1a室という感じ
前翅の第8室が抜けているのはミスではなく、
ギフチョウなどは第7脈が分化した第8脈が存在するのですが、シジミチョウではこれがないので第8室は存在しません。
では早速紹介していきましょう!
1.肛角部紋色彩
最初は肛角部紋の色彩変異についてです。
肛角部紋とは、尾状突起付け根の黒班および橙色紋のことです。

ここの変異は、僕の知っている限り3パターンあり、左から暗色型、橙色型(標準型)、黄色型(薄橙色)。
暗色型はおそらく遺伝による変異で、年によって差はありますが大体1/20ぐらいでいるイメージです。黄色型に関してはよくわかりませんが、色素が薄く現れてこのような色になっていると思われます(写真の個体は擦れているだけのような気もするけど…)。
※型名に関しては自己流で呼んでるだけです
2.肛角部紋衰退
クマソの肛角部紋は、低温になればなるほど衰退する傾向がある。これはクマソに限らず、肛角部紋を持つ他の多化性シジミでも見られる(ウラナミやツバメシジミなど)

左が高温期型(標準型)、右が低温期型の持っている中で一番肛角部紋が衰退している個体です。
おそらく、探せば完全消失している個体も見つかるのではないでしょうか(ウラナミシジミでは確認済み)
3.地色
クマソの地色は、低温になればなるほど明色になる傾向があります。これに関しても、他種の多化性シジミにも見られる特徴である。

左から高温期型(標準型)、中温期型、低温期型。
中温期型と記した個体は、標準型と斑紋の違いはほとんどないが、地色だけが明るくなっている。このパターンは9月〜10月あたりに一気に増えてくる。
一番右の低温期型と記した個体は、一般には寒冷期型とも呼ばれているが、ここでは低温期と表記しておく。ここまで低温化が進むと、地色が明色になるのに加えて4l列以降内側の各l列紋が一種の民流れのように地色に広がり、さらに白みが増す。この個体よりもさらに白い個体を採集しているが、それはPart4でまた紹介します。
4.l列紋白帯
上記で記したように、クマソの4l列以降内側の各l列紋は低温期になると地色に広がり、一種の紋流れのようになる傾向がある。その中でも4l列(〇印)はその傾向を強く受け、内側に流れて5l列と結合し、白帯状となる(これはウラナミシジミにも見られる)。
左は高温期型(標準型)、右は低温期型。
ここの白帯が綺麗に現れるとめっちゃかっこいい!
ある程度発達すると、♀の場合翅表に白帯が反映されることもしばしば見受けられます(Part2で紹介)。
5.5d列第7室紋の大きさ
クマソ標準型の斑紋で特に特徴的なのは、5d列の波状紋が並ぶ中で唯一黒塗りの第7室紋(〇印)かと思います。この斑紋パターンは、タイワンツバメシジミやタイワンヒメシジミ、タイワンクロボシシジミなどにも見られます(なんでかタイワンついてるのが多い…)。
この紋は、低温になると色が抜けて紋が拡大しますが、ここでは黒塗り時における紋の大きさ変異を紹介。

左は採集した中で紋が一番大きかった個体、右は一番小さかった個体。
左個体は、紋拡大に加えて若干楕円形になっている。
6.5d列第7室紋色抜け・紋流れ
上記で紹介したのと同じ箇所(5d列第7室紋)の斑紋変異。低温になるほど色が抜けていき、さらに低音化が進むと内側に流れて楕円のような形になる。

左から高温期型(標準型)、中温期型、低温期型。中温期型と記した個体は黒がほぼ完全に抜けているが、5l列に接している付近は黒がほんの少し残る(これは低温期型でも同様)。また、9d列に関しても黒が少し抜けかかっている。
低温期型に関しては、ここまで低温化が進むと他の5d列紋(第4〜5室に関しては他より流れる傾向が強いけど…)も内側に流れ、紋が拡大している。
7.5d列第4,5室紋流れ
クマソの翅裏変異で最も顕著に現れる、5d列第4,5室紋(〇印)の変異。この第4,5室は、中室からの延長線の位置にある。5d列紋は低温期になるほど内側に流れる傾向が強くなり、7d列紋と結合する。

左から高温期型(標準型)、中温期型、低温期型。
中温期型と記した個体は、6l〜7l列の第4,5室にかけての地色が明色になっている。これは、6l列紋が内側に薄く流れたことによるものと思われる。さらに低温化が進むと、今回の低温期型のように5d列紋が内側に流れて7d列紋と結合する。
ここの変異の面白いところは5d列紋が7d列紋に結合するまでの過程が細かく現れるというところ。
上の写真では低温期型に至るまでの過程が分かりづらいと思うので、さらに各々の中間的な性質を持つ3頭を追加して比較した。

番号順に見ていくと、1〜6に至るまでの過程がよく分かります。
1.標準型:とくに変異はない
2.l列紋が薄く流れる
3.第4室のd列紋のみが軽く流れる
4.第4室のd列は完全に結合、第5室は軽く流れる
5.第4,5室紋ともに流れ、完全に結合している
6.流紋内の黒斑が5番より薄れ、紋全体が灰色に
比較してみると、どうやら第4室紋のほうが第5室紋より流れる傾向が強いようです。
8.並べてみた
最後に、今回紹介した個体も含めて特徴的な個体を1枚にまとめて並べてみました。

こうしてみると、同種とは思えないほど違いますね!
ただこれだけ違っても、それぞれの個体の中間的形質をもつ個体を探して比較することによって、どのように変異が現れているかを知ることができるというわけです。
一応これで、裏の変異紹介は終了です。
今回紹介した変異以外にも、雌雄間での斑紋パターン傾向の違いや、季節ごとによる各斑紋パターンの出現比率など、まだ調べたいことがいろいろあります。
また新たな変異を採集したら随時追加投稿していきますので、よろしくお願いします。
Part2は♀の翅表変異について!