三年前の3月20日。
私たちは児島文化センターのホールに立っていました。
すごい音量のカーテンコールの拍手に呼び出され、ステージに立っていました。
あのとき。
「最後の五匹」を上演した私たちも、また観に来てくださったお客様も。
それに、その場にいなかったすべての人たちも。
生々しい同じ傷を抱えていました。
起きたばかりの震災。目に焼き付いて離れない、あの壮絶な破壊の風景。
悲しみ、嘆き、絶望……。
少なくとも同じ日本人なら、みな、まだあの傷口はぱっくりと開いたまま、あの場所にいた。
「最後の五匹」は、地元の由加にある鬼退治伝説をベースに、現代にも発信できるメッセージを、児島という地元ならではの特色を人の絆として織り込んだ形で創作されました。
ざっと以下のようなストーリーでした。
古代、瀬戸内海に浮かぶ児島、その霊地・由加には、阿久良王(あくらおう)という鬼がいた。阿久良王は荒ぶる神として、瀬戸内の交通の要衝である児島を支配し、そして暴力と恐怖によって支配していた。
征夷大将軍、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が朝廷より派遣され、田村麻呂は由加の神の守護を受け、それを退治する。
敗れた阿久良王は、その魂を75匹の狐に分け、その後、75匹の狐は世の中のために働いた……
だが、長い歴史の果てに世界は戦乱や災害によって荒廃し、絶望的な状況になっていく。その中で、75匹の狐はしだいに宿るべき善良な人間を失い、もとの阿久良王のもとに戻っていく。
もとの鬼として。
テロ、自然災害、犯罪。
荒廃した世界から、もはや最後の五匹となった狐たちの魂が、それぞれの悲しみの中から立ち上がり、結集する。阿久良王が復活しようとする児島に。
最後の五匹たちは、阿久良王の完全なる復活を阻止し、そして世界を破滅する救うことができるのか?
というようなものでした。
(このストーリーは、現在、ノベライゼーションの準備を行っています)
最後の五匹となった主人公たちは、それぞれの絶望的な状況の中から、それでも希望を捨てず立ち上がり、「自分のできることをしよう」とします。
このストーリーは、あまりにも暗示的で、あまりにもあの時の私たちの状況にシンクロしていました。
2012年、二度目の市民創作ミュージカルの台本のお話を頂戴したとき。
私は、ふと、あの時の続きが見たくなりました。
あの「最後の五匹」の続きの物語を。
それが、今回の「ヤオヨロズ」なのです。