執筆にかかろうとしている「リメンバー」で、非常によいアイディアを思いつくも、さてそれをどう料理すればよいのか、悩んでいる。
中華がいいのかフレンチがいいのか、それとも和?!
小説家は限りなく料理人に近い存在だと思う。
食材にはいいものもあればそうでもないものある。
あまりにも品質の悪いものは、とうていお客様には出せない。
しかし、手を加えれば、お金のもらえる料理になることだってある。
黒毛和牛のフィレやロースばかりがよい食材では決してない。
そりゃ、天然物の魚がいいに決まっているが、コスト的に養殖物しか使えないことだってあるだろう。
そんなときは逆に料理人の腕の見せ所だ。
二流の素材でかにいい仕事をするか。素晴らしい一品に仕上げるか。
盛りつけ一つで印象が変わることだってある。
素材が一流のときは、逆にシンプルな方がいい。
あまり手を加えず、素材のうまみを最大に引き出す努力をすればよい。
料理の基礎であろう。
しかし、こういった基本をわきまえていない料理人(自称プロ)も多い。
押さえられたコストの中では、この程度のことしかできません。
以上、終了。
あるいは、いい素材を使っているんだから、これでいいだろう。
その皿に色気なし。
私に言わせれば、これらは二流以下である。プロと名乗るのもおこがましい。
実際、こんな傲慢な態度で仕事をやったら、ミステリー・イベントで面白いものなど、絶対に作れないのだ。
コストが抑えられているのなら、手間ひまかければよい。
高級素材であるのなら雑でいい、そんなわけはない。
それが高級素材(かならずしも流通価格の問題ではないが)だということが食べる人に伝わるような一皿でなければならない。
いかによい素材を使っているからといって、盛りつけがいい加減であっていい訳がない。
一流の素材だからこそ、こういうスタイルなのだということが、そこに表現されているべきなのだ。
お客は見た目の印象も含めた一皿を食べに来る。
小説家も同じだ。
読者はお金を払って本を買って下さる。
面白くもないものにお金を払えば、怒りもする。
素材とは、ミステリーでは非常に優れたトリックや魅力的な謎の構築を意味する。
一般的な小説でも、読者を魅了するテーマや筋立てなどが該当する。
これら思いついたアイディアをいかに有効に使い切るか、素材の持ち味を生かし切ることができるか、作者の力量にかかっている。
今思いついているのは、全ストーリーへの補完的なアイディアであって、決して根幹を成さない。
が、謎の解明には重要なファクターとなるはずのもので、使い方を間違えなければ強力なだめ押しとなるはず。
さて、どうしたものか。