若いのが来て云う、
「先生、僕は希望がないのです」「俺だって無いさ」「では、何故生きて居るんですか」「死ぬ訳にはゆかんからさ」
希望、希望と云ふが、そりや何だ?ちよっと聞きたい。
「希望」って何だか位いは如何にトンマの俺だって判っては居るさ、でも、君の云う希望って何の事を意味してゐるか聞きたいんだ、希望の種類じやない。
「希望」ってそりや何のことだ?
よく眼をあけて見ろ、町の商屋のおやじだって、かかあだって、会社の社長だって、貴方の希望は何だ!!ときいたら、ハテナと考へるだろ、何故だ、昔、此の戰爭に負ける前の時代には、安定してゐて、政府も百年の計をたててゐたし、皆も、明日明后日、否、十年、二十年後も斯うなのだと、思ってゐたし、社会も安定してゐるから、今、斯うして置けば十年後は斯ふなると考へて生活出来たから、希望も持てたし、策も立てられた。
今はメチヤメチヤになって、明日どうなるか判らない。政治だって、二三人のボスが、いろいろ工作すれば動く、昔は政治に失敗すればその責任を自ら取って、天皇陛下に骸骨を乞ふ云うこともあったが、今の總理大臣は誰に対して責任を取るのか、本当は公僕として国民に対して責任をとらねばならぬ新憲法になって、誰が国民に申し訳ないと引責辞職した奴があるか?ズルズルにズルくっても、強引に引きづっても何とかなる時代だ。
