「先生、武子さんと恋愛でもないみたいなのに結婚なんて変だな!!」
何言ってやんでい。これは俺が仲人なのだ、三四回二人で歩るかされている中に、俺の目からは、チヤンと、お互ひに愛情的な気分が湧いて居るのが判るんだ、判らんでこの俺が結婚まで命令するもんか。
「夫婦の情愛なんか夫婦になってから出来るもんだよ、結婚しない中から、それが出るもんか、結婚する、女房が風邪で寝る、夫が飯を炊く、妻君が心配して床の中でアレコレと気をもむ。酔っぱらって帰る、玄関で大の字になって眠り初めるのを、靴をぬがせる、引っぱって行って寝せる、ヤレ此處が痛い。ヤレ斯うだ、といろいろやって居る中に徐々に湧いて来るのが夫婦の情愛なんだ、怒って居る憎しみではなく、悪口を云ひ合ひ乍ら安心して居る、そして、お互ひに愛情があるとかないとか、心に掛けて心配することもない。安心して切って居る、
此の濃い細やかな情愛は”恋愛”なんかと、とても比較になるもんか。
