「商賣は道によって賢し」と云って、その商賣その道には「なる程」と思はせる達見の人もあり、その商賣から世の中を眺めての批判は隨分と立派で徹底し乍ら、いざとなると動きが付かない。機微を掴み損ずる人こそ、商賣が下手なのではなくて、上手、器用すぎて居るのではないでせうか、


 昔、第一次欧州対戰の時、獨逸の二箇師團が仏蘭西の一箇師團の包囲を受け、簡單に全滅させられたことが、戰央に残ってゐます。その時、獨逸の總司令官は全力を擧げての大逆襲を命令すればよいのに、自分が砲術出身であったものだから、自ら、軍力を抜いて砲兵の中に立ちまじって、ソラ打て、ソラ打て、と陣頭指揮、その為に功角の二方の歩兵騎兵は何の指揮もないままに戰線をアチコチいてゐる中に完全に勝機を失って、ムザムザと自分の半分の兵力の敵に全滅させられて終ったと云ひます。