因縁に依るものであれば何とか改善出来るが、靈位に依るものは、解決の方策はないのである、靈位的に頭の上らないオヤジはどこまでも女房に負けるし、努力奉仕を認められない女房は何時までも靈位での女房になれないのである。


 皆、これは靈位の現はれである、それを気が合はない、趣味が違ふとか、時代的な感覚の差だとか云って居るが、近代的な言葉で表現するとそうなる。


 甲は弟の乙には、兄弟とは云ひ乍ら兄弟の感情を持ち得ないで、他人の丙には兄弟以上である好感情を持つ丁には初対面から、「蟲が好かぬ」と云ふ、丙と丁とは、物凄く仲が良い、甲は丙には親近感と同時に絶対頭が上らないで無理でも承知するが、その丙は甲の弟には無条件に酷使されてもよろこんでゐる。


 全部靈位に依るものである。


 「彼奴にはどうも」といやいや乍ら逃げられないのも靈位だし「一目ぼれでどふ仕様もない」のも靈位の働きである。