昔の名将の中には、一旦奪った城を守り抜くと見せて、敵の大軍を其処に集中させておいて、其の間に他の方面を攻略し、次は、わざと負けて敵を其の城に入らせて、完全に包囲して終ったり、城を明け渡す前に火攻の仕掛けをして置いて、敵の大軍が勝戰!!と一気に入城したら、火を掛けて囲んで潰して終ふと云ふやり方をします。どうせ敵の作った城の中で敵を燒き殺すんだから、何も惜しくない。


 大局の微を知って戰ふ者は斯く勝ち、微を知らぬ者は自ら、焚かれるのである、


 機微に通ずとも云って、大局的な変化を知り、それを利用し、その変化に先立って先手を打ってこそこれが出来るのである。
 

 人生の実生活では本当に此の微を知って、捨てるものは棄て、ひろふものは手に入れなければなりません、何時までも前の職業に就着して時宜を知ってゐる例が沢山あるのです。世の中の移りかはりに盲目的であったり、親ゆづりの看板だから等と云って居る中にお顧客をすっかり失って居る人がありました。


 昔は、鍋釜は金物屋で賣ってゐましたが只今では電気屋に賣ってゐる。お酒屋さんで週刊誌を賣り、薬屋さんではアイスクリーム、お米屋さんでは、シロップや味の素まで賣る世の中になりました。


 インスタント時代だから、神社では結婚式場と一緒にお産婆さんをおいて産院も経営するかも知れない、こんなめぐるましく変化する時代に、その変化の根底の機微をよく見極めておかぬと、完全に敗残者になって終ふ。