出世とは世に出ることです。

世の中に自分の存在を認めさせ、認められることです、

何を認められるか、それは自分の才能 特技を認められる事です。

 

不出世の名人 と云ふ言葉があります。

不出世の人とは「仲々見つかり難い人」と云ふことで、何時の時代にもすぐ見付けられる程度の人と云ふ意なのですが、又、それだけの才能 技能を持ち乍ら、世の中に受け入れられない、又は世の中の、又、生活の状況が悪るくて可愛そうに知られずに終った名人とも解せられます。


此の様な名人は本当は沢山いるし、今の世では、名人程でなく、少々の才能でも、何か変った事をやればすぐスポンサーが鵜の目鷹の目で探し廻って居るマスコミ時代ですから、甘く行ってワーっともてはやされて居る人も多いのです。


しかし、それは本当の出世でせふか、その人達は本当に鍛練を経ているのでせふか、只思ひ付き程度の変った事でしたら、一時ぱつと現はれて、すぐ忘れられて終ふ人も多いのです。画家でも、歌謡界でも フラフープ、ダッ子チャンの様にパッと流行したかと思ふとすぐ飽きられ忘れられる「芸術家」があります。


性命的なものを掴んでいなくともせめて鍛練があれば 世の中に永く尊ばれて忘れ去られることもありません。


兎に角 出世、それには、それだけの鍛練と、その人の性命的な特技を本当に理解して掛ることなのです。