彩夏がやっている檜の森リゾートは、祖父の代に自分の山を切り開いて小さなキャンプ場から始まった。
キャンプブームに押された事と彩夏とその夫で横浜国立大学経営学部を出て御殿場市役所に勤めている三歳年上の宇翔夫婦の経営手腕によりキャンプ場のみならずコテージが20棟・温泉付きの全100室のホテル・バイキングスタイルのレストラン・ケーキショップとかなりの設備を有している。
近隣にいくつものゴルフ場やカーレースのスピードウエイや有名な霊園などもあり、平日でも宿泊者が途切れることはない。
ゼネコンの社員という立場からこれらの施設の設計段階からアドバイスをしていてとても満足なものとなっている。
また建築会社も大林組で公共事業を委託している数社を紹介した。
当初は次男の直人に檜の森リゾートを任せる案もあったが、若いころに離婚したことによって自暴自棄になり荒れた生活となり、農業に専従させ檜の森リゾートにはアルバイト程度に手伝いにいかせている。
彩夏の夫の宇翔と直人は中学校の同級生だ。
若いころにとても可愛がってくれた大叔父の墓前に近況を報告し墓参りもすませ明日は御殿場館での同窓会だ。
ちょっと緊張気味にタクシーを降りて御殿場館の入り口を入ると受付を見つけた。
受付にいる航輝君の顔はわかったがほかの二人は見知らぬ人たちだった。
航輝君と軽く挨拶をして会場の方に入り自分のテーブルに向かうと既に男女が会話をしているところだった。
席に着きその二人を見ると一人は郁也君だった。
もう一人の綺麗な女性は見たことがあるような感じだが思い出せず、二人の会話の邪魔をするのは悪いと思いあたりを見回していた。
(続く)