上得意を失った。失言が原因だ。
そのお客さんは、豪放磊落。贔屓にして頂き、ご家族も皆いらしてもらっていた。
神保町で営業していた頃、そのお客さんが「これ預かってといてよ!」と私に櫛を預けていった。咄嗟のことで断れなかった。小さな櫛くらい店内に置いても差し支えがないので、まあいいかと受け取ったが、これが私を非常に憂鬱な気分にさせていった。
神保町の店内は4.5坪と非常に狭く、少しでも物を減らしたい。築50年の部屋を少しでも清潔感を出したいと思っていたので、その小さな櫛が大きな存在になってしまっていたのだ。かと言って、一旦預かってしまった物を返すのも気が引ける。だって余りにも小さな物体なのだから・・・
そして益々その櫛が重くなっていったのが、ある日、櫛のお客さんがいらした時に、私は櫛を出しておくのを忘れた。「俺の櫛は?」と何気なく彼は言ったのだと承知しているが、「余計な物を預かってしまったばかりにクレームをつけられた」と被害妄想的に私はとらえてしまっていた。「洗っていない入れ歯」と同じくらい不潔な物を押し付けらているように感じるほどに。
そして引っ越しを機に私はその櫛を処分した。やっと解放された・・・が、新店舗にそのお客さんがいらして、施術後「俺の櫛はどこかな?」と当然だが言ってきた。
「汚いので捨てました」と返答した。言い方が悪い。感情的に反発心もあった。「汚れてきていたので、処分させて頂きました」と
言えばよかったのだが、怒りの方が勝ってしまっていたのだ。「私はあなたの入れ歯を預かる奴隷ではない!」という怒りである。
でも、まあ良くなかった。この後悔をAIに相談すると、彼(AI)は相談者を絶対に責めないと噂を聞いていたが、その通りで「お店はあなたにとって城。その城の衛生面を守るため、あなたが放った言葉は必要だった。そうしないとそのお客さんはあなたにもっと理不尽な要求をしてきたでしょう・・・」といった返答をくれた。本当に責めないのだな、と思った。
でも、今回の対応は完全なミス。大きな売り上げを捨てて学んだ接客対応でした。




