長崎県佐世保市男子中学生失踪事件① | 全曜日の考察魔~引越し版

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1969年2月23日、長崎県佐世保市内に住む庄山仁くんが失踪する事件が発生しました。 

普段なら帰宅するはずの夕方になっても仁くんは帰宅せず、代わりに不審な男(当時24歳)が家を訪ねてきました。

この男が言うには、仁くんとその友人の少年に、大金の入ったジャンパーを奪われてしまったということでした。 

そして翌日の昼頃、仁くんの父親宛に、仁くん直筆の手紙が届きます。その内容は強盗をしてしまったことを詫びるものでした。 

そして、この手紙を最後に仁くんは完全に行方不明となってしまったのです。

現在であれば街中の至る所に監視カメラが設置されているので、行方不明者の足取りが何かしらつかめると言えますが、庄山仁くん失踪事件当時は設置台数が少なく、迷宮入りしています。

概要

不審な男が訪ねてくる

長崎市立花園中学校2年生だった仁くんは、1969年2月23日午後2時頃、友達の家に遊びに行くと言って、学校の制服制帽姿でそのまま家を出ました。

その後、普段なら帰宅するはずの夕方になっても仁くんは帰ってきませんでした。

代わりに、とある不審な男が家を訪ねてきて、仁くんの帽子を家族に見せながら、 「この帽子をかぶった子供に現金を強奪された」 と語ったのです。

さらに詳しい話では、午後3時半頃、市内の道路で側溝に片輪が落ちたバイクを引き上げようとしていた2人の少年がいたそうです。

そのため、男性は現金46万円がポケットに入ったジャンパーを置いて手伝っていたところ、突然少年のうちの1人がジャンパーを持って逃げ出したということでした。

男性は、遅れて逃げ出した中学生のポケットから、なんとか制帽を掴んだものの、2人を取り逃がしてしまい、制帽に書かれていた名前を頼りに家を訪ねてきたといいます。

行方不明になった仁くんから手紙が届く

その男が訪ねてきた翌日昼頃に、庄山仁くんの父親宛に手紙が届きます。

差出人は息子の庄山仁くんで、強盗事件を起こしたことを詫び、探さないでほしいと書かれていました。

庄山仁くんの直筆だと確認されたものの、それは何者かに書かされたと思われるような筆跡だったといいます。

 

前略

心配かけてすみません。

悪い友達にさそわれて、人のお金をとりました。

中には四十万以上も入っていましたが、僕は少ししかもらっていません。

学校の方は、僕の気持ちがおさまるまで、病欠にしていてください。

すぐに帰っておわびいたします。

どうかさがさないで下さい。仁

 

引用:1969 / 02 / 23 庄山仁(当時14歳、男)長崎・佐世保

「すぐに帰っておわびいたします。」と書かれていましたが、この手紙を最後に庄山仁くんは消息を絶ってしまいました。

この翌日から、警察は誘拐事件の可能性もあるとみて捜索を開始しています。 

捜査

庄山仁くんを捜索するために、警察は大規模な山狩りを始めました。

その翌日からは公開捜査に切り替えて、重要参考人である大金を奪われたという男を慎重に調べ、嘘発見器にもかけています

しかし、この男をいくら調べても庄山仁くんを誘拐した証拠は一切見つからず、さらにこの事件を起こすには単独犯では難しいと推測されましたが、共犯者の存在も浮上しませんでした。

その後も警察による捜査は続きましたが、庄山仁くんの居場所につながる情報が全く得られず、捜査は次第に縮小されていきました。

この事件の謎

謎①、大金を所持していたことが不自然

仁くんらに大金を奪われたという男は、この事件の4ヶ月前に少年刑務所を仮出所したばかりで出所後はクリーニング店で働いていたようですが、これほどの大金を手にしていたことはかなり不自然に思われました。

この男は持っていた金を床下に埋めていたと証言しましたが、家族は一切知りませんでした。

その他にも、日曜に銀行に行ってお金をおろしてきた風を装っていたことが明らかになっています。

1969年当時、日曜に銀行の窓口は空いておらず、さらに現在のようにコンビニで現金を降ろすことはできません。

つまり、大金を所持していた経緯が明らかになっておらず、不自然だと言えます。

嘘をついたのは仁くんか、それともこの男か。

謎②、本当に現金強奪事件は発生していた?

この事件のもう1つの不自然な点は、現金強奪事件です。

上着のポケットに大金が入っていることを、庄山仁くんらがどうして気づいたのでしょうか。現金を封筒などに入れず、そのまま突っ込んでいたのでしょうか。

また、現場検証ではバイクが側溝に落ちていた形跡は見当たりませんでした

バイクが側溝に落ちているのを助けているすきに現金を奪われ、犯人が逃走する事件が発生すれば、現場が物々しくなるはずですが、一切目撃証言もなかったのです。

男性の証言以外、何の証拠もないことから、現金強奪事件自体がなかった可能性が高く、男の捏造だと考えられています。

謎③、庄山仁くんからの手紙の内容が不自然

庄山仁くんが直筆で書かされたと思われる手紙では、「前略」から始まっています。当時中学生だった庄山仁くんが使うには、不自然だと言えるでしょう。

また仁くんは真面目で大人しい性格で、学校では風紀委員も務めていたとのことで、仮に友人に誘われたとしてもそのような犯罪行為に手を染めることは考えづらい。
そして、自分の名前を書き損じており、恐怖の中で強制的に書かされたことがうかがえます。

そもそも、庄山仁くんはいつものように友達と遊びに出て行っただけなので、突然見知らぬ男から現金を強奪し、家族からも姿をくらますという一連の行動自体がとても不自然だと言えます。

不審な男は何かを隠蔽している可能性

庄山仁くん失踪事件の犯人は、庄山仁くんの家に訪ねてきた男が犯人である可能性が高いでしょう。

この男は事件後、すぐに佐世保を去って、各地を転々としながら最終的に奈良県に落ち着いていたようで、奈良県に朝日新聞の記者が取材に行ったことがありました。

男は結婚して2児の父となっており、ダンプカーの運転手をして生計を立てていたようです。

記者の取材に対して明日が早いという理由で一度断っていますが、また記者が来るだろうと考えたのか、起きてきて取材を受けています。

男は小柄ながらとても筋肉質な体型で、訛りの強い関西弁で早口に話し始めたといいます。

「金の出所か。とくに言えん金というわけじゃない。言うと不利になる、ということはちょっとはあるがな。いつかは言わんならん、思うけどな。」

この男の言葉に対して記者は「では今言ってほしい」と伝えましたが、「わしは情にもろいからな。そういわれると言いたくなるんや。けど、警察のメンツがたたんものな」と語ったそう。

また、ジャンパーの中に大金が入っていたことに少年たちが気づいたのは不自然だと指摘すると、「そやな。外から見えんしな。そう言われれば不思議やな。」と肯定した口ぶりでした。

当時の庄山仁くんの外見について記者が問うと、「わしと同じか、ちょっと大きいくらい。」と答えています。

庄山仁くんは当時の中学生にしては大きい方で168センチあり、普通の成人男性と見劣りがしない身長がありました。

かなり小柄なこの男に対してちょっと大きいくらいというのは不自然だとこの記者は指摘しています。

また、現金の出どころや庄山仁くんに奪われた経緯は曖昧で、男は何かを隠蔽している、さらに警察の関与も匂わせています。

不審点が満載の感が否めませんが、結局、この男へのインタビューからは事件は進展せず、その後も庄山仁くんの行方はわかっていません。

また、当時の報道では、庄山仁くんが行方不明になる少し前に、不審な男3人組が近所に庄山仁くんの家族について聞いて回っていたとの情報も出ていました。

ちなみに、庄山仁くんの家族は事件から1年後に、佐賀県藤津郡に引っ越しています。