デパートに買い物にいって迷ったとき、私はなるべく年配の店員さんに相談することにしている。全身タイツ の若い人よりも経験が豊富だし、いろいろなアドバイスをしてくれる安心感があったからである。先日、友だちがガラス?ケースがほしいというので、デパートにいったらば、いろいろなサイズがある。それぞれの寸法の表示がなかったので私はそばにいた年配の店員さんに声をかけ、中に入れるものの大きさをいうと、彼女は、 「それならば、この大きさですね」 と胸を張って、あるケースを指さした。見たところ彼女のいうとおり、それは適当な大きさのように見えたが、念のため、 「内法を測ってくれませんか」 とたのんだ。
   
   不安なときは誰かに聞くなどしてくれればよいのだが、自信を持って全身タイツ間違ったことをいわれると困ってしまう。単に歳をとっただけの人は、さっさと接客担当からはずしてほしい。私が六年前に会社勤めをやめたときに、いちばん最初に感じたのは、これで肩書とは関係ないところで、生きていけるなということだった。私の場合、幸いにも、社長、部長、という肩書システムのなかで苦労したことはなかったが、まわりの人々を眺めていると、多かれ少なかれ、そうしても勤め人はそのしがらみから抜けきれないような気がしたところがいざ会社をやめてみたら、この肩書という代物が前にもまして、へばりつくるのである。

   単発の仕事で全身タイツを渡す、必ずといっていいほと、「肩書はどうしましょうか」 と編集者に聞かれる、いちいち考えるのは面倒くさいので、 「何でもいいです」 というと、むこうは、 「うーん」 と頭を抱えてしまうのだ。年配に店員さんを、こちらはベテランだと思って頼りにする。不安なときは誰かに聞くなどしてくれればよいのだが、自信を持って間違ったことをいわれると困ってしまう。単に歳をとっただけの人は、さっさと接客担当からはずしてほしい。
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