今回も直接、太極拳とは関係ない脱線話になりますが、太極拳の成り立ちには大切かなと思います。

 

前回は 陳一族が 山西省 から河南省  に強制移住させられたところまででした。

この後、陳一族は陳氏の武術(陳式太極拳)を作り上げていきますが、陳氏の武術に大きな影響を与えた武術があります。

 

陳氏が移住させられた河南省には実力的にも歴史的にも武術史の中では非常に重要な部分を占める、少林寺の少林拳と回族(回教徒)に伝わった心意六合拳があります。

 

少林拳は 天下の武術少林より出ず と言う言葉があり、武術であるなら少林寺と何らかな影響があると主張しています。

少林寺には一般に教授する拳種と、厳格に人を選び安易に教えない拳種があります。

秘密裏に伝承者を選んで来た拳種に 心意把 があります。

心意把 は当初、10式以上の単練形があったらしいですが、現在でほとんどが失伝して残ったのは1式(左右で2式の説もあり)と言われているようです。

この心意把の看板技は、単純に足を踏み下ろすだけの簡単な技ですが、単純であるが故、求められるものは非常に非常にハイレベルのものです。

陳式太極拳の看板技 金剛搗碓 は少林寺の 心意把 はないかと言われています。

金剛搗碓も片足で地面を踏み下ろす技です、この技は陳式太極拳の看板技で、陳式にしかないと言われています。

金剛搗碓は色々な解釈がありますが、私が心掛けている部分は 反発力により力を一瞬でまとめる と言ったことです。

金剛搗碓 は足を強く一瞬で踏み下ろすため、あまりやりすぎると体への負担が大きく、体を痛める人もいます。

陳式太極拳以外の太極拳ではこの 金剛搗碓 は型の中には入っていません。

 

心意把

 

金剛搗碓

 

 

もう一つ 陳氏の拳法に影響を与えたとされる物に、河南回族(イスラム教徒)の心意六合拳があります。

 

回族心意六合拳

 

心意六合拳は中国武術の核心と言われる事もあります。

この心意六合拳は主に回教徒に伝えられてきました。

それは回教徒は中国では非常に少数であり、当時、漢族から迫害を受けて来た歴史があり、歴史的に回教徒しか学べない時代があったからです。

要は迫害の中で実際に実戦の中で磨かれてきた拳法ですので、めっぽう強いと言われています。

心意六合拳は 心意 と 六合 から成り立ちます。

先ほどの少林心意把 の 心意 と同じです。

そもそも、少林心意把事体、心意六合拳と何らかの関係があったとされています。

心意は当然、心と意識です。

このあたりは気功的な部分と重なる部分があります。

心から、意識が出て、気が発生するとなります。 

 

心意六合拳、心意把 ともに 心と意識 を看板部分に置いた内面を非常に重視した拳法になります。

 

六合は外三合と内三合に分かれます。

 

外三合:手と足・肘と膝・肩と股 簡単に言うと加速動作が無く、全身が纏まって同時に動くことです。

一瞬で動けは爆発的な動作になります。

全身を一致させなさいと太極拳ではよく言われますが外三合の事です。

小指が動けば全身動かないところが無いと言われるのも、この外三合の事です。

 

内三合:心と意・意と気・気と力 簡単に言うと心が動いた時には力になっていると言うことです。

心が動く瞬間には相手は倒れている物騒な境地です。

日本では無心なんて言ったりもします。

 

陳式太極拳には秘密裏に伝わっていると言われる拳譜があるそうです。

その拳譜は三三拳譜と呼ばれているそうです。

三+三=六です、何を言いたいかと言うとこの三三とは実は六合のことを示しているとされています。

要は陳式太極拳に秘密裏に伝わっている拳譜は心意拳の物とされています。

陳式太極拳が心意六合拳の影響を強く受けているとされるのはその為です。

 

陳氏の拳法は仏教である少林寺の少林拳、イスラム教徒の拳法、心意六合拳の影響を強く受けて成立してきたとされますが、陳式太極拳自体は道教的な思想の影響を強く受けていると思います。

 

陳氏の太極拳ですので、陳式太極拳と呼ばれますが、実は陳氏の拳法が確立した時から、太極拳と呼ばれていたかは、怪しいと思われます。

次回は、太極拳と呼ばれるようになっていくで過程です。

 

続く