全日本企業振興共済機構のお客様の半数以上が株式会社様でありますが、

そもそも株式とは、株式会社が自己資本を調達するために発行される証券です。

 

自己資本は返済銀無のない資金で、損失のバッファーに使えるものなのですが、しかし株式に投資する人たちは、無償で資金を提供しているわけではありません。

 

出資した企業が利益をあげ、それを株主に還元してくれることを期待しているのです。

ただし経営者が適切な経営をしなければ、その期待は裏切られてしまいます。

そこで、株主には経営者を選任り、経営を監視し、企業の重要な意思決定に加わることができる権利があたえられています。

 

したがって企業の経営者にとっては、株主は企業の最終意思定者であり、その株主の持ち分である自己資本を野放図に使っていいということにならないのです。

 

投資家が株主投資で期待している投資収益率の事を期待リターンといいます。この投資家の期待リターンこそが、自己資本の調達コストであり、これを株式の資本コストと呼びます。企業の経営者はこの資本コストを上回る収益を上げることを期待されます。

 

企業の収益を測る指標としては、ROA(総資産収益率=利益÷総資産)やROE(自己資本収益=利益÷自己資本)があります。ROAは事業そのものの収益率を評価するときに用いられROEは自己資産がいかに有効に使われたかを示します。

 

自己資産の利率を高めれば財務の安全性は増しますが、自己資本に対する利率益(ROE)は低下し、株主の期待に応えることが難しくなります。逆に自己資本率を低めて債務に頼れば、ROEは高まりますが、財務の安全性は損なわれることになります。

このように相反する財務の健全性と収益性の適切なバランスをとることが企業の財務戦略のひとつです。

 

企業の経済状況によって株式の価値は上下していきます。企業発行済みの全株指数に、現在の(一株当たりの)株価をかけたものを時価総額といいます。

この時価総額は市場(投資家が)評価するその企業の価値そのものということがいえます。

 

株価が上昇して、時価総額が増加しても、それが企業の資金量(自己資本)をふやすわけではありません。あくまでも企業が手にする資金は株価が発行された時の振込金だけです。

しかし、株価は投資家による企業の通信簿の役割も果たしています。

 

株価が高水準の企業は、市場からもそれだけ高く評価されていることを意味しますので、銀行からの借り入れや、社債発行による資金調達も容易になり、資金調達コストも下げることができます。

また、株式を追加発行して、新たに自己資本を調達することを増資といいますが、株価が好調であればそれだけ増資も容易になりますし、それだけ多くの資金を集めることも可能になります。

 

そうした意味で、株価は企業の追加資金調達力のバロメーターでもあるのです。

 

 

 

全日本企業振興共済機構

栗原 綾乃