かつて東大総長が、卒業生への訓示に
「タダ酒を飲んではいけない」
という話をしたということです。
その時私は、その話の意味が分からなかったのです。
1食7万円の接待をされ、体調を崩し(本当に崩したのかはわからないが)、辞職した役人が出ました。
「ゴチ辞職」と言われましたが、
これこそが「タダ酒」。
東大総長は、この役人みたいにならないようにと注意したのでしょう。
けれど、「そんな心配」と思ったのです。
現実には、東大を出たのに、私と一緒に小学校の手伝いをしていた人を知っています。
(その後は、いい場所にお勤めできたのかもしれませんが)
それに、7万円の食事には、店側の時価(ぼったくりと言ってはいけないかしら)もあると思うよ。
「男に養ってもらったことは、ないわねえ。何でも買ってくれるような恋人もひとりもいなかった」
という宇野千代。
「『生きていく私』がベストセラーになって、億に近いような金を貰ったでしょう。…(略)…税金で七割も持っていかれて。莫迦らしい、という人もいましたが、わたしは大満足。自分の働いたお金でそんなにたくさんの税金が払えたと思うと嬉しいわ」と。
「現在も、一枚幾らという原稿料を貰ってそれで生活している、このことが本当に安心で幸福。一生、現役で働くのがわたしの理想です。」
と言っていた宇野千代。
その人から奪うことなどできないというのが、本当の仕事。
与えるということ。
(参考文献:「宇野千代、振袖桜ちょっと自伝」 聞き書き三宅菊子 マガジンハウス)