久しぶりに小説を読んで泣いたのです。
2008年の埼玉文学賞に輝いた、この小説があることは知っていました。
けれどなかなか読むことができないでいたのです。
理由の一つは、この本が書籍化していないこと。
「いつか本になったら読もう」と思っていました。
今もまだ書籍化はされていないのです。
読みたい人は、2008年の11月6日の埼玉新聞の縮刷版を読むしかありません。
「放課後の羽生城」
この題名を読んで、どんな物語なのか想像していました。
たぶん中学生とかが、放課後に集まる歴史研究部等の部活を作るなどして
羽生城の遺構について調べるという物語なのではないか、とか。
その想像は、半分くらいは当たっていましたが、本当は中学生が老歴史研究家に出会うという話でした。
小説では主人公が子供になっていますが、本当はこれは自分のことなのだと作者の髙鳥邦仁氏は言うのです。
この老歴史家が書かれたと思われる「羽生城」の本、今もあるのか分かりません。
伊奈の県民活動総合センターの図書館にあって、私も拝見したことはあるのです。
「羽生城」について、一冊の本になるくらいの分量を書くということは、非常に大変なことだと思うのですが、どうでしょうか。
けれども、それをされた方がいるということ。それも一冊ではなかったと思います。
そのことが、今も無関係である私の胸までも温めてくれます。
そして、その体験が「放課後の羽生城」を生んだのです。ですが…。
また、偉そうなことを書いてしまいます。
この名作「放課後の羽生城」が書籍化されないという現実。
それもまた重く受け止めていかなければいけないと思うのです。
もちろん自費出版すれば出せるのでしょう。
けれども、きちんと文学賞まで受賞した作品をどうして作者が自費出版しなければならないのでしょうか。
(追記:作品の権利は埼玉新聞社にあり、費用負担をしても出版できないということもあるのかもしれません)
一度でも埼玉新聞に掲載されたのですから、それでいいというものなのかもしれません。
でも、この作品に心を動かされる人がいて欲しいと思います。
書籍化されない理由は「売れないから」ということではないかと思いますが、
ではなぜ郷土を主題にしたこうした本が「売れない」のでしょう。
誤解される書き方かもしれませんが、埼玉に生まれ生きてきて
どうしようもなく、文化的に貧しい環境だなと感じるのです。