「QJKJQ」 佐藤 究

 

江戸川乱歩賞の受賞作である。

 

この本を手に取った、読書愛好家はまず首を傾げるだろう。

 

乱歩賞受賞作に連綿と刻み込まれてきた銘文がない。

 

まるで普通の書籍の装丁でその本は手の中にある。

 

なぜなんだろう?  

 

まず、そう思う。

 

既存のプロの作家の、この受賞作への評価はそれほど高くないとの噂も聞いている。

 

読み始める。

 

ライトノベルの文体。

 

フランスのゲテもの推理小説。

 

世界的なベストセラー作家が生み出したアレックスがそこにいそうに感じる。

 

だが、違う。

 

読者はやがて気づく。

 

知らぬうちに、気づかされてしまう。

 

小説の、新人賞受賞作は、おもしろくないことが多い。

 

けれども、それを手に取り続けるのは、ときおり今までの既存作家にはない、まぎれもない新たな才能をそこにみつけられるからだ。

 

天才的なひらめきがそこにあっても、2作目が出てこない作家は大勢いる。

 

そして、そのさらに下層に、世に出ることのない作家志望者の、闇のように濃い黒い山がそびえている。

 

いや、色も飲み込んだような深い底なし沼か。

 

このような作品が選ばれるなら、自分の作品のほうがどれだけましかわからない。

 

彼、彼女らは、意味不明の呪詛の言葉を吐き続ける。

 

そいつらを丸呑みにして、哄笑するやつが、ときおり、世に出る。

 

さて、この作者はどうなのだろうか。

 

久々にそんな気持ちにさせられた。

 

次がまた読みたい。