夜中に自転車でスーパーに買い物に行った帰り、匂いのない寒風を正面から受けている間に、海を見たくなった。正確にいうと、この冬まだ見に行っていないことに気付いた。
神奈川県立近代美術館葉山館に、年に四回は行くことにしている。春夏秋冬一回づつ。できれば梅雨の時期にも一回。この美術館は、展示も素敵ながら(たとえ展示がマティスでも、混んでいることがないのが不思議。)場所に惹かれる。海が目の前の美術館なのだ。
仕事を抱えつつも、夕方からやればなんとかなると踏んで、日曜日に早起きして電車に飛び乗る。大船まで爆睡。乗り換え逗子へ。車内は、おじさんおばさん方で混み合っている。ただ、彼らの目的地は鎌倉のようで、そこを過ぎるとガランとなる。一駅分だけ、のんびり過ごす。この路線はホームが長いのが好きだ。
逗子でバスに乗る。路面バスのすき方に美術館の相変わらずのガラガラ具合が想像できる。この辺までくると心が良い方向に向いてくる。身体と心が近づいてくる感覚。ちっちゃくしょぼんと一個人に集約されてくる。
バスの細い道を走り抜く奇跡の運転に関心しつつ、到着。開館時間、やはり誰もいない。のんびり展示に見入る。時間をたっぷり使って、できるだけ丁寧に立場を変えて三度ぐらいづつ見て満足する。
この美術館のカフェテリアも好きな場所の一つ。海を正面にしたテラス席もあるが今日は10分も持ちそうになかったので、室内の一番窓辺へ。久々の冬の海。やっぱり色が深い。空も高い。広さを一番感じる海だ。人懐っこくもなく、自由だ。「らしい」と思う。カフェテリアにも、海岸にもだれもいない。持ってきた文庫本にしばらく浸る。
二杯目のコーヒーが終わったので少し浜を散歩。夏はそれができないのが残念なところ。カメラ持ってその辺にいるだけで、怪しいし。。なので、夏以外は散歩向き。深呼吸をする。匂いのある寒風だ。安心する。サーファーが頑張っている。温もりのない光にだまし絵の感覚。遠くに真っ白な富士山。空気が澄む冬が、一番くっきり見える。いつもより大きく見える。きっと白が多いからだ。水は激しく冷たい。一色海岸はなぜだか、「こころ」の冒頭を思いだたせる、帰ったら調べよう、なんてことを思う。ちゃんと生きているなんて思ってみる。一年前と今を比較してみる。
しばらく歩いて気になっていたカフェに行く。この辺は気になる店が多い。ただ、目的地は昼時でもあり混んでいて入る気になれず、今回はパス。店内で販売されている焼き物に興味があったんだけどなと、春に期待。
散歩中に色々な家を見て、「住む」を考える。悪くないと上から目線で思う。風化前提の小さい一軒家を夢見る。
そして、早目になるが、途中鎌倉に寄って、オリーブ屋での買い出しと墓参り済ませて、ささと帰路に。
夕方前に家に戻る。ちょっとだけ心が整体されている感覚。落ち着いた。しばらくは持ちそうだ。
