桑原みずきは4階から何かが垂れてくるのに気づき垂れてくる場所に向かった。

「これは救助袋……
ということは誰かが降りてくるがか」

そう判断した桑原みずきは救助袋の前で待ち伏せていたのだった。

「みずきさん……

〈フィンランド……グハッ!!」

向田茉夏は時を止め逃げようとした瞬間桑原みずきの燃えている左腕で腹を殴られた。

「今何かしようとしたろ?



うん、また誰か降りてくる……」

降りてきたのは木崎ゆりあだった。

「あれみいちゃん、何でこんな所に?
おぎちゃんは?」

「そりゃあ救助袋が垂れてくるなんて目立つことがあったら駆けつけるやろ?
小木曽は知らんで、あんたと一緒やないが?」

「途中で、はぐれちゃって……
でもおかしいな校舎には私と茉夏さん以外にもう「2人」いたのにな……」

「あんたの能力でそれは分からんかったがかえ」

「私のスタンド能力は一定範囲の二酸化炭素の反応を感知する能力だからさすがに誰が誰かというのは分からないよ」

「まぁその件はまた後にしよう。
先にこっちを片づけるで!!」

「そういえばるみさんは?
ってかその腕どうしたんですか!?」

「るみは私が倒した。腕はその代償やね、中々手強かった。」

「(るみも倒された………
みえぴーもるみも私を守るために……)」

向田茉夏の心の中で様々な感情が渦巻いていた。
それは怒り、悲しみ、憎しみ、哀れみ、絶望など負の感情が向田茉夏の心を埋め尽くす。

「そんなことより先に茉夏ちゃんを始末するで!!」

「了解ッす!」

すると向田茉夏が俯きながら立ち上がる。

「おっ茉夏ちゃんもやる気………」

ボトッ……

木崎ゆりあは気付けば何かを持っている。
「いっ………嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

それは桑原みずきの生首だった。

グチャッ

木崎ゆりあは思わず桑原みずきの生首を落としてしまった。

「(今この場でこんなことが出来るのは茉夏さんしかいない……)」

木崎ゆりあは今の向田茉夏を危険だと感じ逃げた。

「(茉夏さんの能力が分からない限り、私はこの人には絶対勝てない)」

逃げ出す木崎ゆりあ。

しかし次の瞬間木崎ゆりあはまた向田茉夏の目の前にいた。
白いソレは向田茉夏に近づこうとする。

「これはもしかしてスタンド?」

木崎ゆりあはそう考え、スタンド能力で学校内を探す。

「(やはり2人?
それも2人は今同じ場所にいる……
ということは……?
あ~もう考えても分からないッ!!
でもこいつは私に敵意は無いみたいだから先に茉夏さんを!!)」

向田茉夏は最初ソレを見た時は驚いたが一方でどこかで見たような気がしてならなかった。

ソレはさらに向田茉夏に近づく。
ソレに気をとらわれていた向田茉夏は木崎ゆりあの攻撃に対し反応が遅れた。

「キャッ!!……なんで?」

「コイツッ!!茉夏さんを………庇いやがった」

そうソレは向田茉夏を木崎ゆりあの攻撃から庇った。
しかしソレはもう限界のようで歩く度に体が崩れている。

向田茉夏はソレを間近で見た時に何もかも悟った。

「(これはみえぴーのスタンドだ……
みえぴーとは必ずまた会うと約束した。
だから約束を果たすために……)」

そうこれは佐藤実絵子のスタンドだった。
佐藤実絵子が自分がいなくなる寸前にすべての力をスタンドに注ぎこんで向田茉夏に会わせようとした。

だが遂に終わりきたようで体が一気に崩れだした。

「キレイ……
まるでクリスマスを連想させるような雪の結晶……」

木崎ゆりあが思わずそう呟いてしまうほど美しい光景だった。

木崎ゆりあをよそに向田茉夏は悲しみに満ちていた。

「みえぴーはもういない……
〈フィンランド・ミラクル〉」

向田茉夏は時を止めた。
そしてこの選抜大会で初めて殴る。
それからすぐに救助袋に入った。

「時は動き出す……」

「おおッ!!って茉夏さんは?
あぁ救助袋に入ってる!!」

木崎ゆりあは殴られた感覚がありながらもすぐに救助袋へ向かう。

「なんか頬が痛いけど茉夏さんに殴られたのかな?
それより茉夏さんがもうあんなに降りてる。
ここで救助袋を切っても意味ないな……
追いかけるか!!」

木崎ゆりあも救助袋に入った。

「ヤバいッ!!ゆりあが降りてきた」

向田茉夏は急いで降りるが運動神経の良い木崎ゆりあはどんどん降りてくる。

「あともうちょっと……



よし、降りた!!」

向田茉夏は遂にグラウンドに降りて、救助袋から出る。

「やぁ茉夏ちゃん」

そこに待ち構えていたのは桑原みずきだった。
「まただッ!!」

木崎ゆりあは急いで音楽室に戻る。

「なるほどね、だから茉夏さんはここに来たわけですか」

向田茉夏は音楽室の外側に設置されていた救助袋を用意していた。

「(ゆりあにバレた……
どうしよう、これじゃあ逃げれない)」

向田茉夏は考える。
向田茉夏と加藤るみは救助袋を使い逃げようと考えたのだ。
何故わざわざ救助袋を用いて逃げようかと思ったかと言うと、4階まで引きつけておいて自分達が逃げた後に救助袋を壊し時間稼ぎをしたかったのだ。

「そこから逃げようってならそれを壊すまでだ。
〈狼とプライド〉」

「ダメッ!!〈フィンランド・ミラクル〉」

向田茉夏はスタンドで木崎ゆりあのスタンドを止める。

「茉夏さんのスタンドって人型なんですね」
「(クッ……押し切れられる)」

木崎ゆりあのスタンドは向田茉夏のスタンドを弾くと救助袋に向かった。

「〈フィンランド・ミラクル〉!!」

向田茉夏は時を止めた。
木崎ゆりあを急いで音楽室から出すと鍵を閉める。

「これで時間を稼げる……」

そして時は動きだした。

「ハッ!!またかよ……」

木崎ゆりあは音楽室に戻ろうとするが鍵がかかっている。

「もうッ!!〈狼とプライド〉」

スタンドで扉をぶち壊す木崎ゆりあ。

向田茉夏は救助袋の準備を完了させ逃げようとしていた。

「茉夏さん!!」

「ゆりあ……」

向田茉夏は木崎ゆりあに吹っ飛ばされた。
「うっ……ハァハァ」

「(茉夏さんのスタンド能力はよく分からないけど、どうやら連発できないみたいね)」

「(時を止めている時に動くのは疲れる……)」

「茉夏さん……」

「何?」

「戦う気あるんですか?
さっきから逃げようとしてるばかりじゃないですか」

「…………」

「言っちゃ悪いですけど逃げてばっかじゃ残れないですよ」

向田茉夏は核心を突かれ何も言い返せない。

「キャッ!!」

「何ですか、そんなに驚いて?
後ろに…………」

木崎ゆりあは後ろを振り返る。
そこには小木曽汐莉が見た、白くボロボロな人のようなものがいた。

「〈狼とプライド〉」

木崎ゆりあはソレに攻撃をする。
ソレは攻撃が当たりさらにボロボロになる。