自陣35ヤードから、

順調にオフェンスドライブして、敵陣11yまで進んだ。


2ダウン7y。ファーストダウンまで7y。TDまで11y。


ハドル内


QB隆之「右Z、右Z。オールメン10yフック。コール2.コール2」


私は、静かにオフェンスタックル徳丸さんの右にセットした。


よく集中した時は、何も聞こえないと言われている。俗に言うゾーンに入ったという奴だ。


何も聞こえない。ただ、QBのスタートコールだけをゆっくり聞いていた。


「セット、ハット、ハッ」


対面のDEを少し右から交わして、奥にいるLBの内側に曲がり込みながら、6歩進んで


ヘルメットを少し右に切った。あまりしない方が良いと言われた小さいメットフェイクを入れて


右足の母指球でしっかりと大地を蹴った。


メットが先、体が後で左にターンし、捕球動作にに入った。


隆之さんのつぶらな瞳が見えた。右手から、放たれたピーナッツ型のボールは、ゆっくりと


静かに、私の右脇を目指して進んで来た。


とても、遅い。とても、静かでおだやかな時間が流れた。


一瞬が永遠を思えるなんとも心地が良い。気分が良い。


(つづく)