■アーバンギャルド、子宮よりメジャーデビューします | アーバンギャルド・オフィシャルブログ URBANGARDE OFFICIAL BLOG Powered by Ameba

■アーバンギャルド、子宮よりメジャーデビューします

ただいま、午前零時。僕は未来の僕に向けて、手紙を書いている。
手紙は基本的に、過去形で書く(過去形で「書いた」)。
僕が明日を眼差しながら書きつけていく未来は、全てこれから起こることだからだ。
或いは、今日はエイプリルフールなので、嘘をついてもいい筈だ。
そういうわけで、僕は嘘を「ついた」。以下に嘘を書こう。

君の、そして僕のやっているバンド(バンドというべきか、ユニットというべきか)が、どうやら一つの節目を迎えたらしい。
僕はたった今、暗闇でこう読んだ。
闇夜に溶けた手が、郵便配達夫のものになって、青い便箋を差し出すだろう。


「アーバンギャルド、
ユニバーサルミュージック内、
ユニバーサルJより、メジャーデビュー」



古い業界の慣わしだ。「メジャーデビュー」という転機を、どうやら君たちも迎えることになったらしい。
どうでもいいことだ。そう君は鼻で笑うかもしれない。
メジャーという名前に固執するなんてアナクロだよと、君は口にするだろう。もっともだ。
しかし君がそんなアナクロな「チャンス」にこだわっていたことを、僕は知っている。
そう、君は具体的な転機を、これまでも求めてきた。

君は既に何度か来た「デビュー」の話を、頭の片隅に据え置いてきた。
「まだ時期ではない」と、遠ざけてきた。

「少女は二度死ぬ」
「少女都市計画」
「少女の証明」

三枚のスタジオアルバムを出し、ようやく決心がついたようだ。
少女の生と死を描いた三枚のレコードを窓に叩きつけ、ようやく外に出る決心をしたらしい。

窓が割れた。犬が吼える。

君たちは真夜中、そっと世界へと繰り出す。
路上はどうだい?やっぱり暗いかい?
これから世界では、君の想像しないことが、何度も起こる。
レコード業界の未来は、正直いって明るくない。
この国もそうだ。懐古だけが先走り、いずれ老いさらばえていくかもしれない。
君はこの路上に、小さな火をひとつ灯して、マッチ売りの少女みたいに歩くわけだ。
まず初めに、マッチの火を、自分が住んでいた家に投げつけてみるがいい。
「アンダーグラウンド」或いは「サブカルチャー」と呼ばれる共同家屋は、積みあがった書物を燃してピンク色の煙を立ち上らせるだろう。
ヴィレッジヴァンガードで売っている外国の菓子のような、甘い匂いが辺りに立ちこめる。


君たちは闇に向かって歩き出す。
或いは、この世界が抱える、大きな「病み」に向かって。


僕は君たちが、もう一度路上に「生まれた」のを確かに見た。
君たちはヌルい地下の子宮から、地上に出た。
これからは、二本の足で立つことを求められるだろう。
君たちのインディーズ時代は終わらない。
独立の精神は、むしろ大衆からの好奇の目に晒されることで、より必要とされるだろう。


「7月20日発売
メジャーデビューシングル
スカート革命」



君たちはスカートの暗闇から、ほとばしる血液となって現実へと落下する。
これが革命的かどうかは、歴史が決めることだ。
君たちの恋の歴史はまだ1センチに満たないが、
O(オ)センチであることを、僕は知っている。
センチメンタルな革命は、この国にぴったりだ。
もっとも欲望し欲望される歌を、君たちに望む。
或いは血を流す君たちに、僕は熱いシュプレヒコールを繰り返すだろう。


「処女を捨てよ、町へ出よう」


君たちの未来は、暗いが故に明るい。


西暦二○○七年四月一日
松永天馬




追伸:
本日、僕は新たなプロパガンダヴィデオの撮影に入る。
アーバンギャルドの初々しい歌姫にセーラー服を着せて。
彼女が血まみれになるとき、我々の白旗は赤く燃えあがる筈だ。
君たちのスカートのなかの革命が結実するまで、僕はもう少し夜を歩こう。




http://www.youtube.com/watch?v=tuoWbuhneDM