この季節になると皆、上を向いて歩く。青い空に描かれた桃色の景色。最愛の人と手を繋いで、仲良い友達と、家族と、ペットと。。。

色んな人がいるが、表情は1つ。皆、素敵な笑顔だ。




僕は桜が嫌いだった。


「勝手に咲きやがって。お前のせいで俺は惨めじゃん。」


公園は花見客でいっぱい。楽しそうな声が聞こえてきて、「うるせぇこの!!」って心の中でいいながら耳にはイヤホン。大音量でロックンロールを流し、ポケットに手を突っ込んで下を向いて歩く。そんな季節。(国際交流花見は異例。)



桜は僕を世界の隅っこに追いやる。誰からも相手にされず、見向きもされず、惨めで醜くて、めんどくさい僕をいつもよりそうさせる。



そんな時、下には小さな青い花が咲いている。オオイヌノフグリだ。


僕はこの花が小さい時から好きだ。幼稚園時代、春になると桜ではなくこの花を摘んでばあちゃんちに持ってってた。それをばあちゃんは飲み終わったヤクルトの容器に水を入れ、さしていた。



春になると、上を見て歩く。無数のピンク色の花びらが宙を舞って、ヒラヒラと落ちていく姿は何よりも美しいとされる。

でも、下を見れば誰から見向きもされないのに気高く、立派に、逞しく咲く小さな青い花がある。誰も知らない雑草なのに、最後まで綺麗に咲いて、花は桜よりも脆く、摘んで持ち帰ろうとするとすぐに花が取れてしまう。


そしてしまいにはオオイヌノフグリ。犬の玉というふざけた名前。(フグリは睾丸という意。)


名前にも見放された誰も知らない雑草。それなのに毎年この時期になると、淡い青色の綺麗な花を咲かす。



僕はこの花を高校の時まで摘んで家に持ち帰っていた。その時、おばあちゃんは既に亡くなっていたが、自分で摘んで持ち帰っていた。おばあちゃんの葬儀は2月だったが、探して手紙と一緒に入れて燃やした。



この前、久しぶりにちゃんと桜を見た。今までは惨めで醜い僕に拍車をかけていて嫌いだった桜が、僕を主役にしてくれていた。


そして、あの憎たらしかったピンク色の景色が何よりも美しいと思ってしまった。



、、、



























女の子に飯誘われて食べに行って気になりだしたら急に別で彼氏を作ってて、桜を見れず、下に咲くオオイヌノフグリを見たあの春。


親友を花見に誘ったら「女と行くからお前とは無理」って言われて、曲がりきった猫背のフォームでポケットに手を突っ込んでイヤホンで大音量で「桜坂」を流しながら下に咲くオオイヌノフグリを見ながら歩いたあの春。


今年こそは行くぞと意気込んだものの、バイトを代わってもらえず気づいたら散っていて下に咲くオオイヌノフグリを見ながら歩いたあの春。




あの春。

















そしてこの春。



















僕は、オオイヌノフグリが好きだ。






















僕は、桜が好きだ。





















僕は、この季節が大好きだ。