息子と父の空手道
Vol.8
経験や努力はウソをつかない
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第十四回 国際親善 マス大山
メモリアルジャパンカップ
組手 幼年 年中の部
エントリーしました。
目標はもちろん、
「己に打ち克つ」こと。
稽古に励み、一つの目標として定めた大会参加。
前回の初大会は試合ができなかった。
大きな緊張や不安、プレッシャーなどあったでしょう。大会の結果は残せなかったけど、あの悔しかった経験がきっと息子を強くさせたと信じて臨んだ今大会。
「とにかく試合になればいい」
父と母の願いはそれだけでした。
開会式の準備のため並びはじめた道場生たち。
集合場所へ連れて行くと、まぁー不安な顔でこちらに視線を送り、なんだか嫌な予感しかしません。
案の定、並んだ道場生たちが会場に入ってくる中、息子だけ列から外れ泣いていました。
「あぁ…またか。」
試合すら始まっていない。
いや、むしろ開会式すら始まっていない。
ルーキーズカップでの経験が…
道場生たちがステージに登り、選手宣誓が行われている中、なんとか息子を並ばせようとステージ下で声をかける父。
そこに同じ道場生のお父さんも駆けつけてくれました。
「善くん、がんばろう!」
「そうだ!みんな緊張してるけど頑張ってるぞ!」
「一生懸命稽古してきたぞ!」
父たちはあらゆる言葉をかけた。
きっと息子は己に打ち克つ。
そう思うしかなかった。
…が、開会式には並べなかった。
その後、試合が始まるまで30分ほどの空き時間ができた。
アップをしようとミットを持ち出し、息子に声をかける。ステージ下で一緒に息子の背中を押してくれたお父さんとその息子さんのところで少し気がほぐれた様子。
息子はミットを蹴りはじめた。
刻々と時間は過ぎていき、試合が近づく。
どうかこのまま、息子が一歩前進できますように。そんな儚い思いで時計を見る回数が増えていく。
組手 幼年 年中の部
参加者が集まり、試合の順に赤と白に分かれて自分の出番を待つ。
息子の横で片ひざをつき、試合前に最後の声をかける。
「ここまで一生懸命稽古頑張ってきたな。相手選手に負けたっていい。稽古が足りなかっただけだ。また稽古して強くなればいい。」
「・・・」
「でもな、善くん。まずは稽古を頑張ってきた自分に自信を持ってぶつかってみようぜ?なんでもやってみないとわかんない。どうせなら優勝してトロフィー持って帰ろうぜ。」
「・・・」
「ドキドキしてるのはみんな一緒。稽古頑張ってきたし、よし!やってやるぞ!って気持ちが一番強い人が試合で結果を出せるんだな、きっと。」
「・・・」
「善くんは稽古頑張ってきたもんな?」
「・・・うん。」
「よし!やってやろうぜ!?」
「うん!」
「ゼッケン 49番 善選手 …… 」
「押忍!押忍!!」
想像以上に大きな声で。
大きな大きな一歩を踏み出した息子がそこにいました。
押忍。
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