ガッツとグリフィスの魂が一つというのは、あくまで可能性の一つとしてそういう話も面白いかもなーと思う感じです(笑)。
ベルセルクにはヒンドゥーの言葉(シヴァ、ドゥルガー、プラーナなど)も出てくるので、ラーマーヤナのことが思い浮かんだんです。
ファンのささやかな想像の楽しみとして、パッと思いつきでそう考えた感じですね^_^
ただもしそうならガッツとグリフィスだけ耳が尖っているという描写の理由付けにもなるなぁーなんて思って一人でニヤニヤしてるだけの話です(笑)。
でもちぶりさんにも楽しんでもらえたなら、こちらとしても嬉しいです。ありがとうございます⭐︎
「唯一人おまえだけがーー」のシーンはやっぱり見開きのシーンですし、グリフィスの心情描写の中ではかなり重要なシーンですよね。かなりというか転生前のグリフィスの心情としては最も重要なシーンですかね。
そういえば記事の中に「ベヘリット発動のきっかけ」は考察していますが、「フェムト転生の動機」は記していませんでしたね。
フェムト転生の動機とは、私が思うにはーー
ベヘリットの発動のきっかけが先に記した通り、「夢の挫折ではなくガッツ」にあって
フェムト転生の動機が「ガッツではなく夢」にあると思います。
ただ見方によっては「グリフィスにとってはガッツこそが彼の追い求める夢だった」とも言えるので難しいところなのですが(そちらの話は今製作中のグリフィス考察に記しています)、
フェムト転生の動機でいうと、「自分の国(城)を持つという夢」にあったと思います。
贄を捧げる前にユービックが「今一度帰るがいい、お前の原風景に。そして知るのだお前自身が何ものであるか、これは幻ではない。お前の意識界における真実」と言って、スランが「路地裏の道」と呼んだ光景をグリフィスに見せます。
そしてスランは残された鷹の団残党を指して、それが「夢の残骸」だと言います。
グリフィスは「…夢の、残骸…」と呆然としながら反唱します。
そこでボイドが城の光景を見せながら「だがそれでも思い果てぬなら、それでもなおお前の目にあの城が何よりも眩しいのなら、積み上げるがよい。お前に残された全てを、一言心の中で唱えよ、"捧げる"と」と言います。
もしフェムト転生の動機がガッツ(を再び手に入れたいという思い)にあるならば、ボイドはここで城ではなくガッツの姿を見せたと思うんです。
「ガッツを再び"自分のもの"にしたいなら他の鷹の団団員を生贄に捧げてフェムトに転生せよ」という具合に。
しかしボイドは城の光景を見せて示したーーーそれが唯一、グリフィスがフェムト転生の動機になりえる理由であったからなのだと思います。
そしてグリフィスはガッツの方を振り向き、例のセリフを微笑みながら独白します。
因みにガッツは鷹の団を去る時、グリフィスのことを「本当に振り向かせたいやつ」と呼んでいますが、このシーンにおいて「ガッツはグリフィスを振り向かせている」んですよね。(そもそも元々、グリフィスは友情&心情的にはキャスカが嫉妬するほど、ガッツにずっと振り向き続けてたのですが)
だから「そのがらくた(夢)が色あせるほど(ガッツが)目に痛い」というセリフにある通り、グリフィスの中ではガッツは「夢以上に大きな(大切な?)存在」になっていました。
グリフィスにとってガッツは、地下牢のセリフにある様に「冷静でいられなくなる相手」です。だから夢のことを忘れてしまった。
本音で言えば、グリフィスは夢の実現よりもガッツが欲しかったと思います。肩を組んで互いに屈託なく笑い合える仲に戻りたいと願っていたのだと思います。
しかしそれがガッツに肩を掴まれたことによって、完全に実現不可能になってしまった。(その絶望がベヘリットを発動した)
そうなるともはやグリフィスには元々の夢が実現する可能性もなく(あの身体では再起不能であるから)、
またガッツも手に入らず(二度と許せなくなってしまったから)、
ただ残った団員からの哀れみだけ(ボイドの言った慈悲〔ばつ〕、スランの言った夢の残骸)しか残っていない。
もはやその絶望しか残っていない。(だからこそのベヘリット発動なのですが)
全ての可能性が閉ざされ、グリフィスには絶望しか残っていなかったからこそボイドは「それでもなお、あの城が眩しいのなら〜」と言ったわけですね。そこで魔を持ってして運命に対峙できる因果・因縁(真紅のベヘリット)がグリフィスにはあったからこそ。
そしてグリフィスは捧げるわけですが、グリフィスの個人的な想いで言うとやはり「夢よりガッツ」なわけです。
だから最後に無残り惜しそうに一度振り返り、ガッツのことを微笑みながら見つめて「お前だけがオレに夢を忘れさせた」と言ったのだと思います。
では、グリフィスがもう既に本音のところでは夢のことなんてどうでもいいのに、何故「それでも」再び夢を追おうとしたのか?
それは今まで散っていった部下達の死を無駄にしないためだと思います。
「でももし、あいつらのために、死者達のために、オレが何かしてやれることがあるとしたら、それは勝つこと、あいつらが命を懸けてまでしがみついたオレの夢を為し遂げるために」
このセリフで、グリフィスは「夢を成し遂げる」とは言わずに「為し遂げる」と言ってるんですね。
ニュアンス的にはもう義務的な感覚だったのだと思います。
「そう、今さら後悔して何になる。死者へ今さら何が言える。罪を今さら悔やんで何になる。詫びることなどできない」
純粋に夢中になって夢を追うというより、もう引き下がれないところまで来てしまったからやるしかない、という感じでしょうか。
だから「自分の夢だから実現させたい」のではなく、「多くの人に期待され、その期待してきた沢山の人が自分のために死んでいってしまったから、その人達の死を無駄にしないために夢を実現する」という感じなのだと思います。
だからある意味、グリフィスってすごく優しいというか責任感が強いのでしょうね。
キャスカが回想していた「散っていった少年をグリフィスが弔うシーン」とかもそうですけど、やっぱり人としてとても真面目で繊細で誠実な面を持っていたのだと思います。根はとても優しい人だったと思います。
ガッツもジュドーもグリフィスの中に子供のような無邪気さを見ていますが、
グリフィスは「夢の実現のために無理して、その子供のような無邪気さを非情さや強さなどに変えていた」面があったのでしょうね。
「グリフィスが夢の実現のために無理して強く振るまっていた」という点はキャスカも感じていたわけですし。
「散っていった人々に責任は感じない」とキャスカに語ったグリフィスですが、グリフィスの中にある子供のような純粋な部分は苦しんでいた(責任を感じていた)のだと思います。
心の一部分では責任を感じて苦しんでいる、苦しむのは心が弱いからだ、生半可では実現できない夢のために強くなければならない、だから責任を感じているその弱い心を自分で否定するーーそのグリフィスの葛藤が彼が自分の手で腕を掻き毟る描写として描かれていたのだと思います。
(現実の私達においても欲望の実現にとって心の純粋性は荷物にしかなりません。欲望を実現するためには我儘に強くなければなりません。そのために魔性は心の純粋性を否定・拒否します。なので現実の私達においても、欲望は魔性なんです)
グリフィスはあのシーンで、男色のオッサンに抱かれた自分の身体に嫌気がさして自分の身体を掻き毟ったのではなく、その心の葛藤故に自分の身体を掻き毟ったのかなと。
そして本来はとても純粋な人であったからこそ、夢を実現するために必要な非情さに関しても純粋に非情になれたのだと思います。(その純粋さがあったからこそ、渇望の福王という純粋な全き魔に転生できるだけの資格があったとも言えます)
なのであの「…げる」は、その義務としての夢の実現のためだったのだと個人的には思うのです。それがグリフィスの運命としての義務だった、という具合に。
何故それがグリフィスの運命としての義務だったのかといえば、これは私個人の妄想的考察ですが、「後々グリフィスが世界を救うために必要だった」のだと思います。
夢を実現すること…それがあくまで義務的なものであり、転生前のグリフィスの本音ではなかったからこそーー最後にガッツの方を振り向いたーーそんな感じの心情だったのかなぁと。
(人間としての自分の心に嘘をつくからこそ、「魔」なのでしょう。その人間としての心を殺すからこその、魔物への転生)
そして夢を忘れていたことを思い出し、夢を忘れさせるくらい自分を惹きつけたガッツに対して微笑んだ。
あの微笑みは、ガッツに対するサヨナラみたいな意味があったのではないかと思います。
なのでグリフィスは「夢という義務を忘れてガッツという本心からの夢を当のガッツに見させてもらっていた」と言えるかなと。そしてそのガッツという夢の終わりを悟って最後にガッツに微笑んだのだと思います。
何故、グリフィスが義務としての夢を忘れていたことを思い出せたのかと言うと、それはガッツへの執着が断念されてしまったからなのだと思います。
もうあの時点で、グリフィスは完全にガッツのことは諦めていたと思います。その諦めの微笑みといいますか。
ガッツが手に入らないとわかりきって、諦めきったことにより、ガッツに対する様々な激情が消え去り、それでようやく冷静になり、そして自分の義務(夢)を思い出した。
そして自分にとって唯一、ガッツだけが特別だったのだと自覚した上で、自分の命と同等かそれ以上ともいえる大切なものを捧げたのだと思います。
これも製作途中のグリフィス考察記事に出てきますが、
グリフィスは剣の丘の再会シーンでガッツに対してこんなことを言ってます。
「お前は知っていたはずだ。オレがそうする(夢を必ず実現する、夢を裏切らない)男だと。お前だけは」と。
「ガッツだけ」は知っていたはずだ、と受肉後のグリフィスは考えているんですね。
それは換言すると
「数多の敵と仲間の中で唯一、ガッツだけは自分がどんな者かを知っていた=理解していた」
となるわけでして
それは丁度
「数多の敵と仲間の中で唯一、ガッツだけが夢を忘れさせた」
と心情的には同じというかとてもよく似た構図なんです。
転生前のグリフィスにとってはガッツだけが「唯一、夢を忘れさせた存在」。
受肉後のグリフィスにとってはガッツだけが「唯一、自分を理解していた存在」。
こうして簡略化して書くとより、わかりやすいと思いますがその「ガッツだけは」という心情の構図は変わらないまま同じなんです。
なので受肉後のグリフィスにとってもガッツの特別さ自体は実は変わってないんです。
受肉後のグリフィス当人が「(数多の敵と仲間の中で)"お前だけ"は知っていたはずだ」と言っているのですから。
でも運命は円環ではなく螺旋なので、その内容は少し変化してるという訳ですね。
そしてもはやグリフィスでなくなってしまった完全なる魔物であるフェムトにとってガッツは「取るに足らない存在」なのですが、フェムトがそうやってガッツを冷たく見下して見向きもしないのには理由があると私は考えていまして、その理由などもグリフィス考察記事に出てきます。
長くなってしまいましたが、フェムト転生の動機については、私はそんな風に考えているんです。
でも漫画内のそういった描写というのは、読み手が自分の感性で自由に受け取れるものですから、皆がそれぞれ「多分、こうだろう」とか「きっとこうだ」と思う心情をベルセルクという物語に重ねて読んで楽しむことが良いと思います。
あくまで私の考察は、私個人の妄想ということで(笑)。
ええ、もしよろしければ気軽にコメントして下さい。
「ガッツの誤解」という記事自体がちぶりさんのコメントへの反応から生まれたものです。
元々「ガッツの誤解」という記事は、ちぶりさんへの返信コメントとして書き始めたものです。
元はもっと短い文だったのですが、それでもコメントの文字数がオーバーしてしまっていて。
なのでコメントの方は短くまとめて、コメント欄に入りきらなかった文から発展させて三つの記事にしました。
ちぶりさんがコメントして下さらなかったら書かれなかった記事です。
ちぶりさんのコメントという因子が、記事という果報になったーーそういう「因果」によって記された記事であるということです。
現実の宇宙における私達の因果も不思議なものですね。
ちぶりさんがコメントを下されば、それがそのまま私の新しい考察への呼び水になり、それがそのままベルセルクの考察記事になったりするので、気軽にコメントして頂けたら幸いです^_^
なので、迷惑などころか私自身が楽しいです。
ちぶりさんの御期待に添えるような考察ができるのかどうかは、あまり自信はないのですがーー幸運にも今のところ、ちぶりさんは楽しんで下さっている様子なので、私としても嬉しい限りです。