突然扇風機が回らなくなった。故障したかな?

機種はYT-328GMI、メーカーはユアサだ。

 

正確に言うと、普通に回っていた扇風機を一旦止めてから一切の反応が無くなった。

さっきまで普通に回っていたのに....

 

まあ、替えの扇風機はあるし廃棄すればいいだけの話だが

老人は暇で普段から身を持て余している。

なので突然回らなくなった原因が何かを調べて、修理できるものなら直してみたいと考えた。

 

 

壊れた扇風機は上記の通り古い。2006年製だ。

修理技術者以外の人は分解しない。との但し書きがあるが...

 

まあ、気にせず分解してみよう。

ただし、コードがコンセントから抜かれているのを確認してからね。

 

で、まずは制御回路を取り出してみる。

扇風機の制御回路は、電源のON/OFF、強さ、OFFタイマーなどがセットになっている。

昔は抵抗器だけで電圧のコントロールをして風量を変えていたのに進歩したものだ。

 

 

中央のICはSM3015B BM8Bだ。

これはファンコントロールのICであり、今でもよく使われている。

詳しくはネットでデータシートを参照してほしい。

 

2018/07/15追加

ここから

(近頃読む人が多いのでデータシートのリンクを貼っておきます。)

https://www.alldatasheet.jp/datasheet-pdf/pdf/98216/SAMHOP/SM3015B.html

ここまで

 

英語だがピンアサイン、基本制御回路図などいろいろな事がわかる。

 

ちなみにSM3015の種類は色々ある。末尾はA~Dのタイプがあり、型番が同じでも

ピンの数が16/18/20/22の4種類ある。

 

 

話を戻そう。

電化製品が壊れることはよくある。

今回の扇風機のように突然回らなくなることも多い。

 

では何故回らなくなったのか?

 

真っ先に考えたのは過電流などによる回路の焼損だ。

 

分解してみて初めて分かったのだが、この制御基板には過電流に対する保護回路

がのせられていた。

2つ上の画像を見てほしい。

右上の青いコードの付近にヒューズがある。

これは一定以上の電流が流れると、中の金属線が溶け回路に電流を流さなくなる仕組みだ。

 

回路のどこかが焼けているなら、必ずヒューズが切れている。

切れていないなら設計ミスだ。保護装置の意味がない。

 

で、ヒューズを見てみると、ガラス管が曇っていて切れているかどうか見えない。

いや、老眼だから見えないのか。

面倒だがテスターを当ててみる。

 

問題なく導通する。

つまり切れていない(長時間の過電流はなかった)という事だ。

 

しかし、ヒューズが切れていないからといって回路に焼損がないとは言えない。

回路部品を焼くに十分な時間はほんの一瞬だからだ。

極めてまれなことだが、過電流が流れヒューズが切れるまでのわずかな時間で回路部品が焼かれる事もある。

一瞬の過電流で部品が焼かれて回路がショートし家のブレーカーが落ちる。

ブレーカーが落ちた瞬間に元電源が断たれるので、ヒューズが溶断するに至らなかったという場合がそうだ。

 

なので念のため回路部品を見てみる。

 

 

これらの部品で交流100VをICの定格電圧である直流5Vに下げているようだ。

電圧の差が熱になるので、この制御基板では一番負荷がかかるところだろう。

 

画像の部品名

黄色の四角いもの=MPX GPF/C 0.1μ 275V=キャパシタ=電気二重層コンデンサ

薄い青の抵抗器=酸化金属皮膜抵抗器(サンキン抵抗器)

茶色の抵抗器=炭素皮膜抵抗器(カーボン抵抗器)

黒の円筒形部品2つ=整流用ダイオード(おそらくショットキーバリア)

金色の円筒形部品=ダイオード(ツェナかショツトキーバリアか不明)

茶色の円形部品=セラミックコンデンサ

基板の裏側の茶色い部品=フィルムコンデンサ(別画像)

いずれも部品単価は安い。

 

部品を拡大鏡を使ってよく見てみる。

目視では焼損を確認できなかった。

 

基板の裏側も確認する。

画像上側の大きな部品はフィルムコンデンサである。

拡大鏡を使って見てみたが、焼け焦げた跡はどこにもない。

 

しかし、目視では問題ないように見えてもダメな場合もある。

表面は無傷でも中身がダメージを負っている事もよくある。

 

これを確認するには、基板から部品を外しテスターで調べるしかない。

基板から部品を外さないでテスターをあてても正確な値が出ないからだ。

外すのは面倒なので最後の手段として後回しにすることにした。

 

では次に何をすべきなのか?

 

やはり機械は酷使するところが劣化が早い。

 

扇風機で一番酷使するところはどこなのか?

そう、ON/OFFボタン(スイッチ)だ。

 

画像を見てほしい。

画像の下段に5つのタクトスイッチがある。

 

 

光の関係で見づらいと思うが、右上段にON/SPDと基板に印刷されている。(赤丸)

 

このスイッチは電源のONとファンのスピードをコントロールする回路につながっている。

 

このスイッチに基板裏からテスターをあててみた。

スイッチなので導通か非導通かのどちらかなのだが、スイッチを押した状態でも

押さない状態でもテスターの値が非導通で変わらなかった。

 

念のため他の4つのスイッチにもテスターをあててみた。

キッチリ導通と非導通が切り替わる。

 

回らなくなった原因の一つがこのON/SPDスイッチである事が確定した。

 

ここで制御回路の他の部品がすべて正常であると仮定してテストをしてみた。

ON/SPDスイッチを別回路で導通させる。

 

ここから先は感電の可能性があるので、絶縁手袋を使う。

100Vを甘く見ると死ぬ可能性がありますよ。

 

まず扇風機のコードをコンセントに差し込み、基板の裏側のON/SPDスイッチ回路にピンセットを縦向きにあて導通させる。

 

すると何のことはない、正常に回りだした。

仮組して2時間タイマーを設定した。その他の動作も確認したが全く問題ない。

 

扇風機のモーターもほんのり熱くなるだけで許容範囲内だ。

 

故障の原因はON/SPDスイッチ回路に付いているタクトスイッチと結論が出た。

制御回路に問題がなかったのは偶然かもしれないが、とりあえず良しとしよう。

 

それで、タクトスイッチはいくらかなと調べると。

ヤフオクで10個100円だった。

アマゾンで50個134円だった。

 

50個の方が一つあたりの値段は安い。

そんなに使う当てもないのだから、とりあえず10個100円の物を買うことにする。

送料込みで300円くらいか。

 

タクトスイッチはいろいろ種類がある。大きさ、ボタンの長さ、基板固定の向き。

スイッチ端子の数が微妙に違う物が売り出されている。

 

タクトスイッチが届いた。

早速ハンダを剥がして元のスイッチを取ってみる。

 

左が新品、右が取り外したもの。

見た目は変わらない。

しかしテスターをあてると、右の外した方は導通と非導通が切り替わらない。

新品の方も試す。

出荷にあたりテストはしているだろうが、不良品の可能性もある。

導通と非導通が問題なく切り替わる。

良品という事だ。

 

部品の確認作業が終わり、次は付け替え。

基板の同じ所へ同じ方向で差し込む。

スイッチの方向を間違えると回路上で正常に機能しない。

 

 

元と同じように付け直した。

ついでにOFFスイッチも酷使されていると思うので取り替えた。

 

テストして問題なく動いたので、本組し動作の最終テストを行った。

 

 

すべての動作が正常である事を確認した。

 

今も全く問題なく動いている。

 

今回は回路の根幹部品の異常ではなかったので運がよかったのだろう。

以上で修理報告を終わります。