本日、午後、日大対関大のアメフトの試合で反則タックルをした日大選手の記者会見がありました。
当該選手本人が登場して実名を名乗った上での記者会見でしたが、こんなブログでわざわざ実名を書く必要はないでしょう。
当該選手は反則タックルは監督およびコーチの指示であったことを明言し、しかしながら、それに責任転嫁することなく、反則タックルをしたことは自分の弱さであることを強調した会見内容でした。
事の真相は24日までに予定しているという日大側の会見内容が明らかになるまで、場合によっては捜査機関のしかるべき捜査が終了するまで断定することはできませんし、この記者会見を見た被害者の父親は計画的な反則タックルであることを知って警察への被害届にとどまらず、告訴も辞さないと態度を硬化させています。
しかし、皆様がすでに感じているように、世間の眼はすでに日大当該選手に同情的になっています。質問する各記者は質問の冒頭にその勇気に対して礼を言ってから質問してましたし、会見後の各種報道番組もまたしかりです。
そのような論調になっているのは何よりも当該選手が反則タックルを心から悔いて反省してる誠実な人物であったことと、それを支えるご両親のご見識ゆえのことですが、ZEKEとしてはこの会見を指導した弁護士の役割についても同業者として指摘しておきたいと思います。
ZEKEはこの会見が代理人弁護士同席でなされると昨日発表されたときから、必ず、生中継で見ようと決めていました。なぜならば、代理人弁護士が誰かとか、その弁護士が冒頭に何を語るかは、後の概略をまとめたニュースでは紹介されないだろうと思ったからです。
出てきた代理人弁護士はわれわれの業界では、事前予防としての危機管理や事後回復としてのダメージコントロールの巧みさでは辣腕の評判が高いあの先生方でした(あえて名前は挙げませんが・・・)。
このような謝罪会見のようなある種のダメージコントロールの注意事項や弁護士的ノウハウについては、このブログでもずいぶん前ですが述べているので、よろしければごらんください。 →クリック:2009.04.27 危機管理としての謝罪の一例:SMAPの草薙(草なぎ)剛さんの芸能生命が"つながった"謝罪会見
アメブロにブログを引っ越してきて、アクセス解析で知ったことですが、上記のようなリンクはほとんどの方が見てくれないことがわかったので(*_*)、一応、要約しておきますけど、
①不祥事発生後、それを隠匿したり、時間稼ぎを行わずに、可及的速やかに、会見又はプレスリリース等で謝罪を行うこと。
②捜査等が進行中であればそれに支障や妨害とならない範囲で、また、事実関係が判明している範囲で、事実関係を明らかに発表すること。
これだけに尽きるのですが、謝罪当事者になるとこれがなかなかできないのです。
日大当該選手の勇気のある会見につき、弁護士のテクニックのようなことを強調するのはおこがましいのですが、この会見は当該選手の将来をつなぐ決定的な"トライ"(アメフトなのでこの比喩にしました)になったと評価できます。刑事手続きで厳しい処分になる可能性も減りました。もっとも、彼にとって寛大な刑事処分を獲得するためには、態度を硬化している被害者との示談成立を目指すなど、弁護士にはまだまだ困難な課題がありますが、その辺は抜かりのない凄腕の先生方です。
ご本人はもうアメフトをする気はないようなことを述べていましたが、その気になれば復帰すら可能でしょう。アメフト以外の途に進むとしても未来が閉ざされるようなことはないと思います。弁護士の指導するものとしては、それくらい模範的会見だったと思います。情報やイメージの操作と思われるかもしれませんが、それが決定的に大事な世の中なのです。
最近は何か不祥事があるとその者が回復不能になるまでぶっ叩く無責任なヒステリーが横行していることに心を痛めていますが(もちろんホントの悪は断罪されるべきは当然です)、勇気ある潔い会見をおこなった当該選手の将来に幸あらんことを祈る次第です。