大家さんは経営者シリーズ6 なぜ、日本一になると倒産するのか?

 これまで書いてきたことであるが、現代の不動産ビジネスの成功要因は、いかに人に先んじて良い案件を押さえるかということから、顧客にいかにプラスになり、自分たちもプラスになることを見つけて努力し続けること、というふうに変わってきている。

それができる人のところへ、いい案件、いい情報が廻ってくるのである。

だから、大家さんの顧客は誰であるかということにこだわる必要がある。そして、その顧客のことを考え抜くのである。

 顧客創造という観点で考えると、現在の顧客だけでなく、将来の顧客も考える必要がある。人口の動向、都市計画の方向、産業動向を見て、将来の顧客のことを考える必要もある。

 こう書いていて、「アフターサービス工務店」という言葉を思い出した。マンション開発業者であるA工務店の社長の言葉である。アフターサービスを重視することで、現在の購入顧客の次の世代がまた顧客になることを目指すということであった。

A社長からこの話を聞いたときは、将来の顧客を見据えた社長だと感心したのだが、残念ながら、A社は、販売戸数日本一になった途端に倒産した。


D観光、H工務店、Dパレスなど、マンション開発業者は、必ずと言っていいほど、日本一になると倒産する。

 日本一の座を守ろうとすると、次の年度の販売のために大量の土地の仕入れをせざるを得ない。景況が悪くなり、土地の価格が下がり始めると、担保価値が不足し、一気に資金繰りが悪化し倒産にいたる、という構造である。

「企業の寿命30年説」というものがあるが、あまり先の世代ばかり見つめすぎても、足元が安定していないと何もならない。

 結局A工務店は、Oグループに買収されたが、Oグループが狙ったのは、A工務店の持つ、マンション管理部門の収益性の高さであったと言われている。
アフターサービスそのものは、やはり重要であるということだ。

「足下を掘れ、そこに泉湧かん」という言葉の通り、将来の顧客は、現在の顧客をいかにフォローしてゆくかということのなかで考えるべきである。今の入居人の友人・知人・親戚・一族郎党・兄弟家族は、将来のお客様かもしれない。
(つづく)

税ショップ 公認会計士 三好貴志男

大家さんは経営者シリーズ5 銀行から資金とともに、いい物件の持ち込みがある

前回はビジネスのありかたが、WIN―LOSEの関係から、WIN―WINの関係へとはっきりと変わってきていると書いた。

大家さんも、近所の大家さんとは、WIN―LOSEの関係かもしれない。駅近に新しいマンションが建つと、こちらに悪い影響がある。

昔は、こうしたWIN―LOSEの関係が重要視された。都市計画をいち早く知り、他人を出し抜いていい土地を買い占めるとか、役所から許認可権をもらうために、議員を使って抜け駆けするということが、経営者の仕事であるとされた時代があった。

今でも「規制産業」においては、許認可権獲得のために、賄賂や収賄、接待が重要な仕事であり、秘密主義的な社風が残っている業界もある。

しかし時代は大きく変わってきた。

経済が成熟し、作れば売れる時代から、モノ余りの時代になった。生産者主導から、消費者主権の時代になっている。

顧客に支持されることがまず第一であり、神経の多くをそこに集中すべきである。顧客に支持されるモデルを作れば、土地や建物はあとから付いてくる。

つまり、いい不動産運営手法を持っているところには、銀行から資金とともに、いい物件の持ち込みがある。

大家さんは、顧客の心をいかにつかむかということに神経を集中すべきである。

では、大家さんの顧客は誰であるか。
前回までに
①マンションの入居人。
②入居人の親。
③マンションの近隣の住民
④不動産仲介業者
⑤オーナー自身の友人・知人・親戚・一族郎党・家族
⑥銀行や会計事務所などの利害関係者
⑦入居人の学校の学生課や近隣の事業会社
ということを書いた。

しかし、大家さんの顧客はこれだけであろうか。
(つづく)

税ショップ 公認会計士 三好貴志男
「大家さんは経営者」シリーズ 4  野球部員もまた、野球部の顧客 

前回は、銀行や会計事務所などのその他利害関係者も、大家さんの顧客になる、と書いた。が、大家さんの顧客はもっとある。

「もしドラ」では、野球部の女子マネージャーみなみは、野球部員もまた、野球部の顧客だと考えた。
この発想はすごい。
これはつまり、「野球部が勝つことで喜ぶ人全員が野球部の顧客」であるとしていると言える。

これはすごく大事なことである。

従来は顧客の考え方を、「売り手」に対する「買い手」という対立する枠の中でとらえてきた。

しかし、現代のビジネスの成功要因は、お客様にいかにプラスになり、自分たちもプラスになることを一生懸命すること、というふうに変わってきている。

対立ではなく、WIN―WINの関係を作ることがビジネスの基本である。
ビジネスのありかたが、WIN―LOSEの関係から、WIN―WINの関係へとはっきりと変わってきている。


「野球部が勝つことで喜ぶ人全員が野球部の顧客」という発想を、大家さんの、アパート・マンション経営に応用するとどうなるだろうか。
「アパート・マンションが存在することで喜ぶ人全員が顧客」であると考えることができる。

 縁起は悪いが仮に、そのアパート・マンションが火災で焼失したと想定するとどうなるか。アパートの入居人の通う学校や職場も影響を受ける。入居人の友人知人も影響を受ける。

入居人の通う大学や、会社も重要な顧客である。
大学の学生課にも、近隣の事業会社へも、菓子折を持って挨拶に行っておかなければならない、ということになる。

このように、顧客概念を広げることによって、WIN―LOSEの関係からは見えなかったものが見えてくるのである。

しかし、大家さんの顧客はこれだけであろうか。
(つづく)

税ショップ 公認会計士 三好貴志男