譲渡制限付株式報酬、いわゆるRSは、上場会社やスタートアップの役員報酬・インセンティブ報酬として使われることが増えています。

 

ただ、実務上はかなり注意が必要です。

 

「株式報酬だから、会計上も税務上もだいたい同じように処理すればよい」と考えると、会計処理、法人税申告、税効果会計のいずれかで誤りやすい論点です。

 

特に重要なのは、最初に次の分類をきちんと分けることです。

・事前交付型か、事後交付型か
・現物出資構成か、無償交付型か
・譲渡制限が解除された株式か、会社が無償取得した株式か

 

この分類を誤ると、その後の会計処理や申告調整もずれてしまいます。

 

まず、RSには大きく分けて、事前交付型と事後交付型があります。

事前交付型は、役員や従業員に先に株式を交付するタイプです。
ただし、交付された株式はすぐに自由に売却できるわけではありません。一定期間の勤務継続や、あらかじめ定められた条件を満たすことで、後日、譲渡制限が解除されます。

これに対して、事後交付型は、最初から株式を渡すわけではありません。
勤務条件や業績条件などを満たした後に、はじめて株式を交付する仕組みです。

非常に簡単に言えば、事前交付型は「先に株主にするが、売れない」タイプです。
事後交付型は「条件を満たすまでは株主にしない」タイプです。

この違いは、単なる言葉の違いではありません。


会計上、いつ費用を認識するのか、貸方をどのように処理するのか、税務上いつ損金算入できるのかに影響します。

 

さらに、事前交付型の中でも、現物出資構成と無償交付型を分けて考える必要があります。

現物出資構成とは、会社が役員等に金銭報酬債権を付与し、その金銭報酬債権を現物出資して株式を発行する形です。

この場合、会計上は一般に、株式交付時に前払費用等と資本金・資本準備金等を認識します。
その後、対象勤務期間に応じて、前払費用等を取り崩しながら株式報酬費用として費用化していきます。

イメージとしては、次のような流れです。

金銭報酬債権を付与する

その債権を現物出資する

会社が株式を発行する

対象勤務期間にわたって費用化する

一方、無償交付型は、金銭報酬債権を経由しません。
金銭の払込みや財産の給付を要しないで、報酬として株式を交付する形です。

この場合、会計上は、株式を交付した時点で単純に前払費用と資本を一括認識するというより、対象勤務期間にわたる役務提供に応じて、費用と資本を認識していく整理になります。

つまり、現物出資構成と無償交付型では、同じ「事前交付型」に見えても、初期認識の会計処理が異なります。

ここを混同すると、
「交付時に前払費用を立てるのか」
「役務提供に応じて費用と資本を認識するのか」
という基本的な処理を誤る可能性があります。

税務上も、RSは慎重に見る必要があります。

会計上は、対象勤務期間に応じて株式報酬費用を計上します。


しかし税務上は、会計上費用処理したからといって、すぐに損金算入できるとは限りません。

譲渡制限付株式報酬では、原則として、個人側で給与課税が生じるタイミング、つまり譲渡制限解除時などに、会社側の損金算入を考えることになります。

 

そのため、会計上の費用認識と、法人税上の損金算入時期がずれることがあります。

典型的には、会計上、株式報酬費用を先行して計上した期には、法人税申告上、別表四で加算・留保します。

その後、譲渡制限が解除され、税務上の損金算入が認められるタイミングで、過年度に加算・留保していた金額を減算・留保する、という管理になります。

 

整理すると、基本形は次のとおりです。

会計費用計上時
→ 別表四で加算・留保

税務上の損金算入時
→ 別表四で減算・留保

 

ここで重要なのは、
「会計上費用になっているから、税務上も当然に損金になる」
わけではないという点です。

RSでは、会計処理と税務処理のタイミング差を、別表四・別表五(一)で丁寧に管理する必要があります。

もう一つ、見落としやすい論点があります。

 

それが、条件未達による無償取得です。

譲渡制限付株式報酬では、役員や従業員が一定期間勤務しなかった場合や、解除条件を満たさなかった場合、会社がその株式を無償で取得することがあります。

この場合、譲渡制限は解除されません。

譲渡制限が解除されないということは、個人側では通常、譲渡制限解除時の給与課税が発生しません。

そして、個人側で給与課税が生じない以上、会社側でも、その株式に対応する報酬費用について損金算入が認められない整理になります。

ここは非常に重要です。

通常、譲渡制限解除が見込まれる間は、会計上の費用計上と税務上の損金算入時期の違いは、将来減算一時差異として扱われます。

つまり、将来、譲渡制限が解除されれば税務上損金算入される可能性があるため、回収可能性を検討したうえで、繰延税金資産を認識する余地があります。

しかし、条件未達により会社が株式を無償取得する見込みとなった部分については、話が変わります。

その部分は、譲渡制限解除による給与課税が発生しません。
会社側でも、損金算入の出口がありません。

そのため、無償取得される部分に対応する会計上の費用は、税務上損金算入されない永久差異になります。

この場合、過去に将来減算一時差異として繰延税金資産を認識していたのであれば、無償取得が見込まれた時点で、その繰延税金資産は回収不能なものとして取り崩す必要があります。

つまり、RSの無償取得では、

・個人側で給与課税が発生しない
・会社側で損金算入されない
・永久差異になる
・対応する繰延税金資産は取り崩す

という流れになります。

 

ここで誤りやすいのは、過年度に加算・留保していた金額の扱いです。

会計上、株式報酬費用を計上し、税務上まだ損金算入できないため、申告上は加算・留保していたとします。

通常であれば、譲渡制限解除時に減算・留保します。

しかし、無償取得された株式については、譲渡制限解除がありません。
したがって、個人側の給与課税も発生せず、会社側の損金算入もありません。

そのため、無償取得分について、過年度に加算・留保していた金額を、通常の解除時のように安易に減算・留保してはいけません。

無償取得分に対応する認容未済額は、将来損金算入される項目ではなく、最終的に損金算入されない項目として整理する必要があります。

 

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