スタートアップの企業価値評価において、DCF法はよく使われますが、最大の課題は「将来CF(キャッシュフロー)自体が当てにならない」こと。 実際に「スタートアップ企業の価値評価実務」(日本公認会計士協会, 2023年3月16日)でもこう指摘されています。 


 > 事業成長への期待、革新的な技術や製品、ビジネスモデルの優位性等に基づく指数関数的な拡大が前提とされることが多い。そのため、事業計画が過去の実績とは不連続であり、将来予測情報についての不確実性が高い。(p.34) 


 > また、資金調達が途絶すると存続リスクが高く、日本の創業5年後の生存率は約80%、欧米では40〜50%程度にとどまる。(p.35) 


 つまり、DCF法でどれほど精緻に割引率を議論しても、前提となる将来CFや存続そのものの不確実性が大きいのです。 この点に関して、同報告書では補完策としていくつかの方法を紹介しています。 


 シナリオ分析(PWERM) 様々な将来シナリオを想定し、それぞれの確率加重現在価値で評価する方法(p.87)。 

→ 将来の不確実性を前提に、「確率加重で平均化」するアプローチです。ちなみに私はあまり使ったことはありません。 


 リアルオプション/オプション価格法(OPM) 将来の流動性イベントを予測できない場合や初期段階の企業に適用可能(p.86)。 

→ 成長の可能性を「オプション価値」として評価に織り込む発想で、私もよく使います。 


 ファーストシカゴ法 複数シナリオに基づいてキャッシュフローを予測し、確率で加重する手法(p.27-28)。 → ちなみに、私は使ったことはありません。 


 結局、スタートアップ評価においては、DCF単独では限界があり、シナリオ分析やオプション的視点との組み合わせが不可欠なのかもしれません。 


理論の「サイエンス」と、現場感覚の「アート」をどう橋渡しするか→ここに専門家の真価が問われているのだと思います。 


 出典:「スタートアップ企業の価値評価実務」日本公認会計士協会(2023年3月16日)