今回のテーマは、「特別償却と税額控除の選択適用」についてです。
企業の投資行動を加速化させ、民間投資を活性化させることを目的した制度が数多く創設されています。
そのような制度の中に、下記のような「減価償却における特別償却」と「法人税額の税額控除」を選択適用できる制度があります。
・中小企業等投資促進税制
・エネルギー需給構造改革推進税制
・環境関連投資促進税制
・生産性向上設備投資促進税制
特別償却と税額控除は、どちらも節税に繋がりますが、状況によって効果が異なるため、どちらが有利かを検討する必要があります。
そこで今回は、「中小企業等投資促進税制」を例に挙げて簡単に有利不利の判定についてご紹介させて頂きます。
1.特別償却と税額控除
(1)特別償却について
特別償却は、通常の減価償却とは別に追加計上できる制度です。
通常の減価償却費に加えて特別償却費を計上することができるので、事業に使用し始めた事業年度の減価償却費が大きくなり、その事業年度の法人税の納税額が少なくなります。
事業に使用し始めた事業年度の減価償却費=通常の減価償却費+特別償却
ただし、特別償却は課税を将来に繰り延べる効果はありますが、償却期間で経費にできる金額は通常の減価償却費の金額です。
(2)税額控除について
税額控除は、限度額までその事業年度の法人税の納税額が少なくなる制度です。
また、限度額を超過した分は、翌事業年度に繰り越して適用することができます。
税額控除=取得価格×一定割合
限度額=法人税額×20%
税額控除を選択した場合は、通常の減価償却費と税額控除のどちらのメリットも享受することができます。
(3)具体的な判断基準
【黒字会社の場合】
毎期安定的に利益が計上されており、資金繰りに余裕がある場合は、税額控除が有利です。
ただし、資金繰りが苦しい場合は、特別償却を選択し、資金繰りを良くする方が有効です。
・特別償却を選択した場合
通常の減価償却費+特別償却
・税額控除を選択した場合
通常の減価償却費+税額控除
【赤字会社の場合】
法人税額が発生しないような会社は、税額控除を選択しても効果はないため、特別償却を選択し、青色申告繰越欠損金として9年間繰り越す方が有効であるといえます。
・特別償却を選択した場合
通常の減価償却費+特別償却
・税額控除を選択した場合
通常の減価償却費
2.具体例
下記は、「中小企業等投資促進税制」を適用した場合のシュミレーションです。
【前提条件】
法人A社(製造業・資本金1,000万円)
会計期間:平成26年4月1日~平成27年3月31日
課税所得金額:800万円
平成26年4月1日に機械装置1,000万円を一台購入
「中小企業等投資促進税制」
(1)取得価額の30%の特別償却
(2)取得価額の7%の税額控除
【特別償却の場合】
※平成24年4月1日から平成27年3月31日までに終了する事業年度は、中小法人等の法人税の軽減税率は15%になります。
【税額控除の場合】
※残額の46万円は翌事業年度に繰越して、税額控除の対象となります。
上記結果から、当期の節税額だけ見れば、特別償却を適用した場合の方が有利であるといえます。
しかし、翌事業年度の節税額を含めると、税額控除を選択した方が有利となります。
特別償却を選択すると、初年度の減価償却費が大きくなる代わりに、次年度以降の償却額が少なくなります。そのため、長期的な視点で見ると永久的に税金を減らす税額控除を選択した方が有利となる場合が多いです。
【参考URL】
国税庁HP「No.5433 中小企業等投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5433.htm