事業年度変更による節税と資金繰り | アークス総合会計事務所のブログ

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個人事業主の場合には所得税の計算期間は暦年で決まっています。
一方、法人の場合にはその法人の任意の事業年度を設定して法人税の計算期間を決めることができます。

そこで、今回のブログでは事業年度(決算月)を変更することによる節税を簡単ですが紹介させて頂きます。

この方法は、以前のブログで紹介しました「お金の支出を伴わず、税金を先送りにする方法」に該当するものです。

1.節税について

(1)税率の違いによる節税

いわゆるアベノミクスにより現在の法人税率は下がっていく傾向になります。
現在の法人税率は25.5%ですが、平成27年4月1日以後開始事業年度の法人税率は23.9%に下がり、また今後も下がっていくことが予測されます。

そこで、税率が下がることと決算月変更によって以下のような節税が考えられます。

【前提】

平成27年3月31日以前開始事業年度の法人税率25.5%
平成27年4月1日以後開始事業年度の法人税率23.9%
元々は12月決算法人で平成27年及び平成28年の2年間は毎月100万円の利益が出るものとする。

(a)決算月変更せずに12月決算のままの場合の法人税

平成27年12月期→12,000,000円×25.5%=3,060,000円

平成28年12月期→12,000,000円×23.9%=2,868,000円

2年間トータルの法人税→5,928,000円

(b)10月に決算月変更した場合の法人税

平成27年10月期→10,000,000円×25.5%=2,550,000円

平成28年10月期→12,000,000円×23.9%=2,868,000円

仮に平成28年11月と12月に法人税が課された場合の法人税を478,000円(=2,000,000円×23.9%)としたケース

2年間トータルの法人税→5,896,000円

(c)節税額

(a)ー(b)=32,000円

これは、平成27年11月と12月利益の合計2,000,000円が決算期変更により25.5%ではなく、23.9%により課税されたためです。

(2)1年のうち、利益が大きい月と少ない月が決まっている場合

会社には1年の中で、売上が大きい時期と少ない時期があるかと思います。

節税という観点では売上(利益)が最も大きい月の前月が決算月としては最適と考えられているのが一般的です。

期首に1年で一番の利益が出れば時間的に余裕を持って、利益を設備投資や広告費に配分できるからです。

具体的には以下のような場合が想定されます。

(1)と同じ前提の上、11月が一番利益が大きい月(11月の売上のみ5,000,000円)の場合

(a)決算月変更せずに12月決算のままの場合の法人税


平成27年12月期→16,000,000円×25.5%=4,080,000円

平成28年12月期→16,000,000円×23.9%=3,824,000円

2年間トータルの法人税→7,904,000円

(b)10月に決算月変更した場合の法人税

平成27年10月期→10,000,000円×25.5%=2,550,000円

平成28年10月期→16,000,000円×23.9%=3,824,000円

仮に平成28年11月と12月に法人税が課された場合の法人税を1,434,000円(=6,000,000円×23.9%)としたケース

2年間トータルの法人税→7,808,000円円

(c)節税額

(a)ー(b)=96,000円

これは、平成27年11月と12月利益の合計6,000,000円が決算月変更により25.5%ではなく、23.9%により課税されたためです。

(2)のように1年で利益が一番大きい月が予めわかっている場合には税率が下がる事業年度では特に検討の余地があるかと思います。

また、税率が一定でも突然の大型受注で利益が大きくなることが予測される場合には、その前に事業年度を変更し、変更後の事業年度の役員報酬の増額などで節税が図れます。

2.資金繰りの観点での注意点

上記1では節税という観点にスポットをあてて事業年度変更を検討していましたが、事業年度変更に際しては資金繰りについても重要な判断要素になります。

具体的には、資金的に余裕がある時期に納税期限がくるように事業年度を検討することです。
納税期限は決算月から2ヶ月後ですので、12月決算法人であれば2月となります。

また、予定納税がある会社であれば予定納税の納税期限にも注意が必要になります。
事業年度変更を検討する際には納税期限の資金繰りにも注意をすることが望ましいかと思います。

3.デメリット

決算期変更をすることで節税というメリットを享受できる一方で以下のようなデメリットもあります。


(1)経営分析の比較

経営分析は1年単位で行うので事業年度変更以前と直後の分析がしにくい。


(2)納税が前倒しになる

決算月変更の事業年度では以前の事業年度よりも納税が前倒しになり、資金繰りに影響が出る。


(3)事務手続きが必要になる

事業年度変更には株主総会の2/3以上の賛成が必要になります。

また、事業年度変更の旨が記載された総会の議事録を作成し、税務署等に届け出をする必要があります。

4.まとめ

上記のとおり、事業年度変更により、節税というメリットを享受できる場合もございます。
一方で、資金繰りやデメリットもあるので総合的に検討した上で決定する必要があるかと思います。