1.リバースチャージ方式の実務上の注意点
(1)経過措置について
当分の間リバースチャージ方式により申告を行う必要があるのは下記の条件をいずれも満たす事業者のみとなります。(改正法附則42,44-2)
(a) 一般課税方式により申告する事業者
(b) 課税売上割合が95%未満の事業者
したがって、免税事業者や課税売上割合が95%以上の事業者は申告不要となります。
(2)課税標準について
今回の改正の適用開始日以降に国内において行った課税仕入れのうち、国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、その役務の提供を受けた国内事業者が、その「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係る支払対価の額を課税標準として、消費税及び地方消費税の申告・納税を行うこととなります。
つまり、リバースチャージ方式で計算する場合の課税標準は次のとおりとなります。
課税標準額 = 課税資産の譲渡等の額 + 特定課税仕入れの額
(3)リバースチャージ方式の計算の際の考え方
上の図の場合、特定課税仕入れに係る消費税額が100あった場合には、次のような計算式となります。
100(課税標準に係る消費税額) - ( 100(控除される消費税額)×80%) = 20(納付すべき消費税額)
2.リバースチャージの仕訳例
事業者向け電気通信利用役務の提供(広告宣伝)を受け、10,000円を支払った場合の仕訳例は以下の通りです。
広告宣伝費 10,800 / 現預金 10,000
預り金 800
源泉所得税を預かった際の仕訳をイメージしていただければ分かりやすいかと思います。
3.具体的な計算例
当該課税期間における課税売上げ等が下記の通りのとき
(A)課税売上げ(税抜) 70,000千円
(B)非課税売上げ 9,800千円
(C)課税仕入れ(税込) 43,200千円
(D)特定課税仕入れ 800千円
(C)の内訳
(a)課税売上対応 32,400千円
(b)非課税売上対応 7,560千円
(c)共通対応 3,240千円
(D)の内訳
共通対応 800千円
1)課税標準額
(A)70,000千円+(D)800千円(※1)=70,800千円
(※1)特定課税仕入れに係る支払対価の額を課税標準額に算入する
2)課税標準額に係る消費税額
1)70,800千円×6.3%=4,460,400円
3)仕入控除税額の計算(個別対応方式)
(C-a)32,400千円×6.3/108=1,890,000円(課税売上対応)
(C-c)3,240千円 ×6.3/108=189,000円(共通対応)
(D)800千円 ×6.3/100=50,400円(共通対応)(※2)
(189,000円+50,400円)×((A)70,000千円/((A)70,000千円+(B)9,800千円))=210,000千円
1,890,000円+210,000円=2,100,000円
(※2)特定課税仕入れに係る支払対価の額についても、課税仕入れとして仕入税額控除の計算を行う
(1)納付すべき消費税額
2)4,460,400円-3)2,100,000円=2,360,400円
(2)納付すべき地方消費税の課税標準額及び地方消費税額
(1)2,360,400円×17/63=636,900円(百円未満切捨)
(3)納付すべき消費税及び地方消費税の額
(1)2,360,400円+(2)636,900円=2,997,300円
以上、2週にわたって「国境を超えた役務の提供に対する消費税課税の見直し」について書いて参りました。
事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合のリバースチャージ方式についてはやや複雑ですが、きちんと理解して新しい制度に備えましょう。
【参考URL】
国税庁:「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について(国内事業者の皆さまへ)(平成27年5月)」
国税庁:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A(平成27年5月)